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新手法の酸化膜形成でSiC-MOSFETの性能が10倍に:30年来の課題に光明(3/4 ページ)
SiCパワー半導体で30年来の課題となっていた欠陥の低減が、大きく前進しようとしている。京都大学と東京工業大学(東工大)は2020年8月20日、SiCパワー半導体における欠陥を従来よりも1桁低減し、約10倍の高性能化に成功したと発表した。
新手法による酸化膜形成
理論計算の結果を踏まえ、新しい手法では、まずSiCウエハーの表面にSi薄膜(20〜30nm)を堆積する。それを750℃という低温で酸化することで、Si薄膜をSiO2膜(40〜50nm)に変換する。酸化開始温度はSiが700℃、SiCが900℃なので、750℃であればSiCを酸化させることなく、Si薄膜だけを酸化させることが可能だ。その後、界面に窒素原子を導入することで高品質化を達成した。SiC-MOSFETの量産では、界面窒化に猛毒のNOガスが用いられているが、NOガス中に含まれる酸素原子によってSiCが酸化して新たに欠陥を生成するため、できることなら使用を控えたい。そこで木本氏らは、高温のN2ガス雰囲気で熱処理を行うことで、界面の高品質化に成功した。
今回開発した新しい手法によって、欠陥密度は、従来の1.3×1011cm−2から、約10分の1となる1.2×1010cm−2にまで低減。欠陥量と性能は比例するので、10倍の高性能化を達成したことになる。さらに、「SiO2膜の絶縁性は素晴らしく良い。絶縁破壊強度は10MV/cmで、これはSi-MOSFETを熱酸化して生成した酸化膜と同等の特性だ。電圧ストレス耐性も向上しており、信頼性についても問題ない」と木本氏は述べる。
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