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NVIDIAがデータセンター売上高で過去最高にArm買収は理想的な選択肢なのか(2/2 ページ)

NVIDIAは2020年8月、2021会計年度第2四半期(2020年4〜6月)の業績発表を行い、データセンター部門の売上高が過去最高を記録したことを明らかにした。Financial Timesは、NVIDIAを新しい“半導体チップの王”として称賛している。

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Arm買収に対する臆測

 同氏は、アナリストたちに向けて語った内容を繰り返し、Armアーキテクチャがいかに理想的かつ最適であるかを主張したが、「Armを買収する予定なのか」という質問に対する回答は避けていた。また同氏は、「NVIDIAは、Armとの間で長年にわたってパートナー関係を構築し、自動運転車やロボット工学用途、任天堂のゲーム機『Nintendo Switch』など、これまでに携わった膨大な数のアプリケーションの中でArmを採用してきた。われわれは最近、Armの開発チームと密接に連携することにより、CUDAをArmに対応させることでArmコンピューティングの高速化を実現している」と語った。

 また同氏は、「Armの開発チームは、実に素晴らしい。Armアーキテクチャが特に優れている点の1つとして挙げられるのが、その並外れたエネルギー効率の高さである。エネルギー効率が高いため、時間をかけて超高速性能レベルを実現することが可能な、ヘッドルームが存在するのだ。このため、われわれは常に、Armと協業できることを心からうれしく思っている」と述べる。

 2016年にArmを3兆円超で買収したソフトバンクが、Armを売却する意向を示していることから、Armの運命をめぐってさまざまな臆測が飛び交っている。

 NVIDIAが最初に買収候補として名前が挙がったとき、筆者は潜在的に無謀だと思った。Armの既存のライセンシー(ライセンス使用者)の一部を疎外することになるだろうからだ。だが、Huang氏が、データセンターの技術スタック全体を所有したいとする話を聞けば聞くほど、NVIDIAによるArm買収がどう機能するかを考えざるを得ない(しかも、Huang氏はArm買収を直接的な言葉で否定していない)。

 NVIDIAによる買収を考える前に、そもそも他にどのような選択肢があり得るのだろうか。世界は約25年も前からArm中心であり、今ではそれ以上になっているので、どの企業がArmを買収しようとも、どこかしらの企業からの反感は買うことになるだろう。

 そうなると、買収する企業の可能性としては、EDAベンダーが残るだろうか。SynopsysがARC InternationalやTensilicaを買収したことを考えると、EDAベンダーがArmを買収したとしても違和感はない。唯一の問題は、Armを買収できる金銭的余裕があるベンダーは、ほとんどないということだ。ただ、プライベートエクイティファンドと提携してArmを買収するという選択肢もある。

 Arm、そして業界の現状維持のために、より現実的な選択肢はIPO(新規公開株)である。だがこれは、実行可能であっても望ましくないかもしれない。ある人物が筆者に対して「320億ドルのIPOでは、ソフトバンクにとって大きな投資収益は見込めないだろう。IPOは、凡庸への“片道切符”である」とコメントしていた。

 NVIDIAによるArm買収は、一部の業界プレイヤーにとっては、当初は破壊的なものになるかもしれないが、NVIDIAに、GPU、CPU、ネットワーク、ソフトウェアといった全てのスタックを与えることになる。NVIDIAは、多くの市場でエースカードを手に入れることができるだろう。ある企業の幹部は筆者に、「中国に依存することなく、欧米諸国が望むものを手に入れることができ、息の長い商売ができるようになるのではないか」と語った。中国が、競争力のある独自のCPUで世界に追い付くまでに約2年かかるとみられているが、少なくともその間は、NVIDIAは市場を支配できる可能性があるわけだ。

 仮にNVIDIAがArmを買収した場合、痛手を受けるライセンシーも当然いるだろう。だが、この課題は克服できないものではない。NVIDIAとArmは今後、“新たな規範”に慣れるためのエンゲージメントモデルを構築したり、Armに完全に依存しない新しい設計で、顧客の開発計画を加速できる可能性もあるのだ。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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