NVIDIAのMellanox買収、中国の承認取得で完了間近:発表から約1年
NVIDIAは、データセンター向けインターコネクト企業であるイスラエルのMellanox Technologies(以下、Mellanox)を69億米ドルで買収する計画に対して、中国当局の承認を得たことを発表した。中国当局の承認の獲得は、この取引における最後のハードルとなっていた。
NVIDIAは、データセンター向けインターコネクト企業であるイスラエルのMellanox Technologies(以下、Mellanox)を69億米ドルで買収する計画に対して、中国当局の承認を得たことを発表した。中国当局の承認の獲得は、この取引における最後のハードルとなっていた。買収手続きは2020年4月27日ごろに完了する見通しだ。
米中貿易戦争が続く中、国家市場監督管理総局(SAMR)がこの決定を下すまでに1年以上の時間がかかった。過去には、Qualcommが中国の承認を得られずにNXP Semiconductorsの買収を断念している。
NVIDIAとMellanoxの取引に関して、米国の独占禁止法の待機期間は終了しており、欧州委員会とメキシコからは独占禁止法の承認を既に得ている。これにより、全ての規制項目をクリアし、買収を進める準備がようやく整った。
NVIDIAは2019年3月にMellanoxを買収する意向を発表した。当時、ライバルであるIntelよりも、Mellanoxのデータセンター向けインターコネクト技術にも高値をつけたといわれていた。MellanoxはInfiniBandのパイオニアであったが、現在はInfiniBandだけでなく、データセンター向けのアダプタやスイッチ、ソフトウェア、半導体など幅広いRoCE(Remote Direct Memory Access[RDMA]over Converged Ethernet)ソリューションを含む高速イーサネットも提供している。
NVIDIAは、ビデオゲームやプロ用ビジュアライゼーションシステム向けGPUのサプライヤーとして広く知られるが、同社の事業のうち成長が著しいのはデータセンターからの需要に対応した製品である。近年、AI(人工知能)や科学計算などに関連してコンピュータの作業負荷が増加しており、性能要件が非常に厳しくなっている。GPUのSIMD(Single-Instruction Multiple-Data)構造は、特にこうした作業の高速化に適している。
NVIDIAとMellanoxは、米国エネルギー省が所有する世界最速の2台のスーパーコンピュータ「Summit」と「Sierra」の開発で何度も協力してきた。NVIDIAは、「当社とMellanoxの技術は、世界トップ500のスーパーコンピュータのうち250台以上に搭載されており、顧客には大手クラウドサービスプロバイダーやコンピュータメーカーが名を連ねている」と述べている。
両社の統合によって、データセンターの顧客により完全なソリューションを提供できるようになり、NVIDIAは同市場における主要ライバルであるIntelとの競争を有利に進めることが可能となる。
コロナ禍でもNVIDIA製品への需要は堅調
NVIDIAのCEO(最高経営責任者)であるJensen Huang氏は、「現在のCOVID-19危機による経済への悪影響を受けて当社が解雇を行うことはない」と断言している。
Huang氏は、従業員への手紙の中で、「ほぼ全ての産業がCOVID-19の影響を受けているが、主要市場におけるNVIDIA製品への需要は堅調で、一部の市場では増加している」と述べている。
一方でMellanoxは最近、アイルランドのTitan ICを買収した。Titan ICは、ネットワークプロセッシング向けのハードウェアエンジンのサプライヤーである。Mellanoxは既にTitan ICのRXP(Regular Expression Processor)技術をライセンスし、MellanoxのマルチコアSoC(System on Chip)「BlueField」ファミリーに組み込んでいる。RXPアクセラレーションエンジンは、高速パターンマッチングやリアルタイムのインターネットトラフィックインスペクションを行い、文字列やキーワード、マルウェアを検出すると同時に、CPUコアを開放して効率を向上する。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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