5G対応のオープンRANコントローラー、業界団体が開発へ:Open Networking Foundation
Open Networking Foundation(ONF)は、SD-RAN(Software Defined Radio Access Network)プロジェクトを創設し、モバイル向け4G(第4世代移動通信)および5G(第5世代移動通信) RANの展開に向けてオープンソースのソフトウェアプラットフォームとマルチベンダーソリューションの開発を支援していくことを発表した。
Open Networking Foundation(ONF)は、SD-RAN(Software Defined Radio Access Network)プロジェクトを創設し、モバイル向け4G(第4世代移動通信)および5G(第5世代移動通信) RANの展開に向けてオープンソースのソフトウェアプラットフォームとマルチベンダーソリューションの開発を支援していくことを発表した。
オープンソースのコントローラーの開発へ
ONFが最初に取り組むのは、オープンRANネットワーク向けオープンソースコントローラー(RIC[RAN Intelligence Controller]としても知られている)の開発だ。同コントローラーの機能は、Open RANハードウェアと「xApps」と呼ばれるアプリケーションソフトウェアモジュールを仲介することである。
ネットワーク事業者は、以前からオープンシステムを採用している。オープンシステムは、ネットワークコアにオープンシステムのアプローチをもたらしたSDN(Software-Defined Networking)から始まった。この流れは、NFV(Network Functions Virtualization)によってさらに進んだ。
通信ネットワークのうち、今もなおほぼ完全にベンダー独自の技術で構築されている最後の部分がRANである。RANは、NokiaやEricsson、これら両社ほどではないが成長軌道にあるSamsung Electronics、そしてHuaweiが独占している。
ONFのエコシステム/マーケティング担当バイスプレジデントを務めるTimon Sloane氏は、「スマートフォンの販売も手掛けるこれらベンダーは、市場の支配を譲りたくないと考えている。だが、通信事業者のRANに対する期待は大きく、強力なRICと強力なxAppsが求められている」と米国EE Timesに語っている。
世界最大のネットワーク事業者の中には、Open RANシステムへの移行を推進している企業もある。ONFのSD-RANプロジェクトの創設メンバーであるAT&TやChina Mobile、China Unicom、Deutsche Telekomなどだ。同プロジェクトのその他の創設メンバーには、FacebookやGoogle、Intel、NTT、Radisys、Sercommも名を連ねている。
現時点ではベンダーが議論を統制し、市場を支配している。その主な理由は、適切なRICもxAppsも存在しないことにある。Sloane氏は、「ベンダーは適切なRICとxAppsの実現は難しいと言っている。それが可能であることが証明されるまでは、ベンダーは不可能だと言い続けるだろう」と述べている。
RAN市場のシェア獲得に関心を持つ企業は非常に多いが、そのほとんどはO-RAN Allianceのメンバーだ。O-RAN Allianceは、無線アクセスネットワークのオープン化とインテリジェンス化の推進を目的として設立された業界団体である。
2020年5月に設立された「Open RAN Policy Coalition」は何らかのロビー活動を行っていると思われるのに対し、ONFは主にエンジニアリング組織である。ONFはSDN/NFV技術の開発に欠くことのできない存在で、機器メーカーのハードウェアやアプリケーション開発企業のソフトウェアでも動作する、ニアリアルタイムのコントローラーユニットを定義することで同市場に関与し続けたい考えだ。
ONFは、そのようなコントローラーを「μONOS-RIC」(マイクロノスリック、と発音)と呼ぶ。メリットの一つは、ゼロから構築されていないことだ。μONOS-RICは、ONOS(Open Network Operating System)のリファクタリングとエンハンスメントによって作られた、マイクロサービスベースのSDNコントローラー「μONOS」を基にしている。
μONOS-RICは、μONOSの上に構築されており、インテリジェントなRAN制御に必要なリアルタイム機能とともに、スケーラビリティ、パフォーマンス、アクティブ/アクティブ構成をサポートする、クラウドネイティブ設計を特長とする。
オープンインフラには、できる限り全ての要素を“分解”することが欠かせない。ハードウェアとソフトウェアだけでなく、ハードウェアそのものもそうだ。業界は、無線ユニット(RU:アンテナと周辺電子部品で構成される)を、ディスクリートなシステムにすることを決定している。これは、RFの専門知識を持つ企業にとって、より独立したビジネスができるようになるという大きなメリットをもたらす可能性がある。
既に、モノリシックなベースバンドユニットが、集中型ユニット(CU)と分散型ユニット(DU)の2つの機能ユニットに分割されている。ただし、最も効果的に分割する方法については、業界は詳細について検討しているさなかだ。
μONOS-RICでは、ベンダーが提供するRUやDU、CU RANコンポーネンツを接続するために、O-RAN Allianceの「E2インタフェース」を使用する。
μONOS-RIC上で動作するxAppsは、従来は各通信機器ベンダーが基地局に独自に実装してきた機能を実現する役割を果たす。ONFによれば、xAppsにはいずれ、RAN機能を最適化するために機械学習も実装される予定だという。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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