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MediaTekが5G SoC「Dimensity」を本格展開AIベンチマークは首位を記録

MediaTekは2020年7月21日、日本の報道機関向けに同社の5G(第5世代移動通信)対応SoC(System on Chip)「Dimensity」の説明を行った。

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 MediaTekは2020年7月21日、日本の報道機関向けに同社の5G(第5世代移動通信)対応SoC(System on Chip)「Dimensity」の説明を行った。

 Dimensityは現在、「Dimensity 1000シリーズ」「Dimensity 800/820」の他、1000シリーズをベースにした「Dimensity 1000+」、そして2020年7月23日(台湾時間)に発表されたばかりの「Dimensity 720」のラインアップがある。

AIベンチマークで首位を獲得した「Dimensity 1000+」

 Dimensity 1000+はTSMCの7nmプロセスを採用している。チップの構成はDimensity 1000と同じで、Arm「Cortex-A77」コアを4つと「Cortex-A55」を4つ搭載する「big.LITTLE」となっている。GPUコアとして「Mali-G77」を9個、さらに、機械学習向けアクセラーターとして、MediaTekが独自に開発した「APU(Accelerated Processing Unit) 3.0」を搭載している。MediaTekによれば、Dimensity 1000+は、スイス連邦工科大学(ETH)チューリッヒ校のAI(人工知能)ベンチマークにおいて、HiSiliconの5G対応SoC「Kirin 990 5G」やQualcommの「Snapdragon 865」などを抑えて首位を獲得したという。

 Dimensity 1000からのアップデートとしては、144Hzのリフレッシュレートへの対応や、HDRの新規格であるHDR10+のサポートなど、「主にユーザーエクスペリエンスの点で改良を図った」(MediaTek)とする。

「Dimensity 1000+」の構成(左)と、ETHチューリッヒのAIベンチマークのランキング 出典:MediaTek(クリックで拡大)

 MediaTekは、Dimensity 1000と同1000+の両方を市場に投入するが、「Dimensity 1000+は、ユーザーエクスペリエンスを改良した点が顧客から前向きな反応を得ている。そのため、市場ではDimensity 1000+の方がより採用されるようになるのではないか」との見解を示した。

 なお、Dimensity 1000+は現時点では、ミリ波帯5Gをサポートしていない。

ミドルレンジ向けの「Dimensity 800/820」

 Dimensity 800/820はミドルレンジスマートフォン向けのモデムとなる。プロセスはどちらもTSMCの7nm。「Cortex-A76」を4個、Cortex-A55を4個搭載し、APU 3.0も集積されている。GPUは「Mali-G75」で、Dimensity 800が4個、Dimensity 820が5個搭載している。


「Dimensity 800/820」の概要 出典:MediaTek(クリックで拡大)

2CC CAのサポートと低消費電力

 Dimensityシリーズは5Gの2CC CA(2波キャリアアグリゲーション)をサポートしていて、既存モデムに比べて30%のカバレッジ向上を実現できるとする。さらに、Dimensity 1000+では、下りで4.7Gビット/秒(bps)、上りで2.5Gbpsと、5G 1CCの場合に比べて通信速度が約2倍になる。

 MediaTek独自の省電力技術「UltraSave」によって、低消費電力化も実現した。UltraSaveは、ネットワーク環境やデータ伝送品質に基づき、電力構成と動作周波数を動的に調整するアルゴリズムだ。UltraSaveを実装することで、Dimensityシリーズの平均消費電力は、他社製品に比べて48%低減しているという。

左=Dimensityシリーズは「UltraSave」の適用により、低消費電力化を実現した/右=レイテンシも低い。Dimensity 820を搭載したデバイスと、他社のSoCを搭載したデバイスで同じゲームを5分間プレイした時の平均レイテンシは、Dimensity 820搭載デバイスの方が約10%低かった 出典:MediaTek(クリックで拡大)

 Dimensityでは最新の製品となるDimensity 720は、Dimensity 800/820よりも下位の品種でミドルレンジ向けとなる。Cortex-A76を2個、Cortex-A55を6個搭載。APUも搭載されているが、APU 3.0ではなく、5G端末を開発するための基本的な機能は搭載しつつ、コストを抑えたチップとなっている。

 MediaTekの日本法人メディアテックジャパンでビジネスディベロップメント ディレクター代理を務める出石賢氏は、日本でのDimensity展開について、「(Dimensityの採用は)基本的には顧客の選択にはなるが、われわれとしては、フラグシップスマートフォン向けのDimensity 1000+からミドルレンジ向けのDimensityによって、幅広く5G向け製品を展開していく」と述べた。

 MediaTekの2019年の売上高は約80億米ドル。ファブレス半導体メーカーとしては、Broadcom、Qualcomm、NVIDIAに次ぐ世界第4位(2019年のランキング)の企業である。日本法人は2007年に設立され、2010年にはNTTドコモとLTE対応通信プラットフォームのライセンス契約を締結するなど、日本の通信事業者とも積極的な協業関係を築いてきた。「日本はMediaTekにとって、一貫して重要なマーケットである。日本は、成熟したマーケットとして十分な規模があり、グローバルメーカーが数多く存在し、最先端技術の発信地でもある。こうした要素から、日本は今後もMediaTekにとって重要な市場であり続けると考えている」(出石氏)

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