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3GPPが標準化作業の延期を決定、5G展開が鈍化か新型コロナの影響で

3GPPは、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響で、5G(第5世代移動通信)に関する一部の重要な標準化作業を延期することを決定した。これを受けて、5Gの展開スピードが鈍化することになりそうだ。

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 3GPP(Third Generation Partnership Project)は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響で、5G(第5世代移動通信)に関する一部の重要な標準化作業を延期することを決定した。これを受けて、5Gの展開スピードが鈍化することになりそうだ。

Release 16/ 17の作業を延期に

 3GPPは数週間前に、「今後少なくとも3カ月間は、対面による会議を行わない」と発表しており、この時点で既に遅延の兆候が示されていたといえる。


画像はイメージです

 3GPPは今回、「Release 16」の「Stage 3」に関する作業を延期することを決定したうえ、「Release 17」の作業も延期すると発表した。今回の延期の発表は、「Stage 3が2021年9月より前に標準規格として確立される可能性がなくなった」ということを意味する。つまり、それまで機能追加の可能性がなくなったのだ。

 Release 16/17では、5G スタンドアロン(SA)ネットワークや、インダストリアルIoT(IIoT)、V2Xシステムの他、さまざまな5Gシステムアーキテクチャなどに向けた最終的な標準規格が確立される予定だった。

 3GPPは、「Release 16 ASN.1(Abstract Syntax Notation One:別の標準規格団体である欧州電気通信標準化機構[ETSI]が手掛ける仕様)とオープンAPI仕様の策定予定が凍結された状態は、2020年6月まで続く見込みだ」と強調している。それに続くRelease 17 ASN-1とオープンAPIの策定に関しては、現在のところ2021年12月に予定されている。

5Gエコシステム全てに大きな遅延もたらす可能性

 今回の延期は、製品開発だけでなく、ネットワーク/デバイスの導入にも影響が及ぶとみられる。例えば、5G SAへの対応を進めているネットワーク機器メーカーは、膨大な数のプロジェクトを延期することによって、今後発表予定の製品が新しい規格に確実に準拠するよう対応しなければならないだろう。

 また、既に完了している試験を再度行う必要も生じるとみられる。具体的には、QualcommとEricssonが行った、5G SA仕様で動作可能なデータ呼び出しに関する試験などが挙げられる。

 また5Gデバイスメーカーは、最終的な標準規格が確実なものになるまでは、ウェアラブルやIoT(モノのインターネット)デバイスなど一部製品に関する開発計画を再度調整する必要に迫られるだろう。これは、5Gエコシステムの全ての当事者たちに大きな遅れをもたらす可能性がある。

 さらに先を見据えると、こうした重要なReleaseの遅延によって、今後5G SAネットワークなどの展開に、深刻な影響が連鎖的に発生する可能性がある。

 3GPPは、今回の遅延によって各分野にどのような影響が及ぶのかという点については、コメントを避けている。

3GPP「ワーキンググループ会議のオンライン化進める」

 今回の問題の1つとして挙げられるのが、3GPPのミーティングは通常、大規模な会議形式の行事として世界各国で開催され、さまざまな国から時には数百人規模の代表者たちが集まるという点だ。全体的なプロセスとして、各段階においてコンセンサス(意見の一致)を得るという方法がとられている。

 ワーキンググループが今後数カ月間のため既に準備しているオンライン会議や電話会議が、妥協や迅速な結論につながる可能性は低いだろう。プロセス全体の遅れは避けられないと見られ、3GPPもこの事実を受け入れているようだ。3GPPが最近更新した情報によると、「最近のオンライン会議を考慮のうえ、『ワーキンググループ』会議を電子的に置き換える最適な方法を検討中だ」と認めている。具体的には、オンラインセミナーソフトウェア「GoToWebinar」をより広範囲に使用するほか、電子メールプロセスをさらに改善する可能性があるようだ。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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