コロナ後の新しい価値観を探る 〜3つのウェルネスとデジタルアクセラレータ:イノベーションは日本を救うのか(37)番外編(4/4 ページ)
コロナ禍は、新しい価値観を探る機会なのではないか。こうした中、筆者は最近、今後の世界観あるいはフレームワークとして、「3つのウェルネスとデジタルアクセラレータ」を提唱している。今回は番外編として、これらの考え方を紹介したい。
デジタルアクセラレータ
これら「3つのウェルネス」において、ヒトと地球環境、ヒトと社会、ヒトとヒトが関わる部分、つまりヒトが実世界とインタフェースする部分は、一般的にアナログだ。だが、3つのウェルネスを実現するには、アナログをデジタルに変換し、高速に処理することが欠かせない。例えば「社会のウェルネス」を実現するためのスマートシティー、「ヒトのウェルネス」を実現するためのデジタルヘルスといった技術には、IoTやAI(ここでは機械学習)、高速通信が不可欠だ。
そう考えると、IoTやAIからビッグデータ、高速通信、ブロックチェーンまで、現在大きなトレンドになっているテクノロジーは、ほとんどが「3つのウェルネス」の実現を加速するための技術といえるのではないだろうか。「3つのウェルネス」の実現を加速させるこうした技術は、まさに「デジタルアクセラレータ」と呼ぶにふさわしいと筆者は考えている。
これからの世界観
筆者のマッキンゼー時代の尊敬する同僚だった尊敬する友人が、2019年11月に「強靭な組織を創る経営」という本を上梓した。筆者は2020年5月初旬に、この友人と何度かやりとりしたのだが、その時に彼は次のようなメールを送ってきた。
「……最終章に私は以下のような文章を書きました。『2020年代はホモ・サピエンスの膨張エネルギーと地球環境との最終戦争の時代になる。1970年代には35億人であった世界人口が僅か35年間で倍増したことは既に述べたところだ。都市化の問題、疫病の蔓延、飢饉、貧困、様々な問題が押し寄せてくる。(中略)2015年9月に国連のサミット会議が採択したSDGs(Sustainable Development Goals)は、事業のついでに行うことではなく、事業そのものになる。経営者も社員も世界を歩き、課題を見つけ、その解決を行うことで存在感のある会社になる。そうでない会社は地球環境が退場をせまることになる。』しかし、その時に今の状況を想像することはできませんでした。」
まさに、その通りだと思う。
これから先、ヒトとヒトとの関わり合い、社会との関わり合い、地球との関わり合いを考えていく上で、「3つのウェルネスとデジタルアクセラレータ」を一つのフレームワークあるいは世界観として、読者の皆さんに参考にしていただければと思う。
⇒「イノベーションは日本を救うのか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜」連載バックナンバー
Profile
石井正純(いしい まさずみ)
日本IBM、McKinsey & Companyを経て1985年に米国カリフォルニア州シリコンバレーに経営コンサルティング会AZCA, Inc.を設立、代表取締役に就任。ハイテク分野での日米企業の新規事業開拓支援やグローバル人材の育成を行っている。
AZCA, Inc.を主宰する一方、1987年よりベンチャーキャピタリストとしても活動。現在は特に日本企業の新事業創出のためのコーポレート・ベンチャーキャピタル設立と運営の支援に力を入れている。
2019年3月まで、静岡大学工学部大学院および早稲田大学大学院ビジネススクールの客員教授を務め、現在は、中部大学客員教授および東洋大学アカデミックアドバイザーに就任している。
2006年より2012年までXerox PARCのSenior Executive Advisorを兼任。北加日本商工会議所(2007年会頭)、Japan Society of Northern Californiaの理事。文部科学省大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)推進委員会などのメンバーであり、NEDOの研究開発型ベンチャー支援事業(STS)にも認定VCなどとして参画している。
2016年まで米国 ホワイトハウスでの有識者会議に数度にわたり招聘され、貿易協定・振興から気候変動などのさまざまな分野で、米国政策立案に向けた、民間からの意見および提言を積極的に行う。新聞、雑誌での論文発表および日米各種会議、大学などでの講演多数。共著に「マッキンゼー成熟期の差別化戦略」「Venture Capital Best Practices」「感性を活かす」など。
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