EC調光ガラス、つくば市の施設で実証実験を開始:窓の透明度をスイッチで切り替え
物質・材料研究機構(NIMS)は、消費電力が小さく発色性に優れたエレクトロクロミック(EC)調光ガラスの実証実験を始めた。茨城県つくば市の支援を受けて、「つくばスタートアップパーク」の窓に調光ガラスを設置し、耐久性や操作性を検証する。
10×10cmの調光ガラスを1000枚以上設置
物質・材料研究機構(NIMS)は2020年9月、消費電力が小さく発色性に優れたエレクトロクロミック(EC)調光ガラスの実証実験を始めた。茨城県つくば市の支援を受けて、「つくばスタートアップパーク」の窓に調光ガラスを設置し、耐久性や操作性を検証する。
EC調光ガラスは、遮光と透明な状態をスイッチで自由に切り替えることができる。このため、ブラインドやカーテンを必要としない次世代の窓用途で注目されている。既に航空機の窓や自動車の防眩ミラーなどで実用化されているが、オフィス用途などへの需要拡大を図るには、発色性などが課題となっていた。
NIMSは、新しいEC材料として「メタロ超分子ポリマー」を開発。安定供給を可能にする合成プロセス技術も、既に東京化成工業(TCI)と共同で確立した。メタロ超分子ポリマーは、既存の材料に比べて電力消費が小さく、発色性にも優れているという。含まれる金属の種類を変えることで青や緑、紫、黒など、さまざまな色を表示させることが可能である。
NIMSは今回、青色と紫色のEC調光ガラスを1000枚以上用意した。外形寸法は10×10cmである。これを木枠に入れて、つくばスタートアップパークにある窓の内側に設置した。実証実験期間は2020年9月から2021年3月までの予定。施設利用者にも操作してもらい、耐久性や切り替え時の操作性などを実際の現場で検証する。これらの結果を参考にして、操作性の改良などを行っていく。
実験のために取り付けたEC調光ガラスは、既設窓の内側に後付けで設置している。このため、実験後にEC調光ガラスを取り外し、原状復帰するための作業も容易だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- NIMSら、調光ガラス向けEC材料の安定供給を実現
物質・材料研究機構(NIMS)は東京化成工業(TCI)と共同で、電気が流れると色が変わるエレクトロクロミック(EC)材料「メタロ超分子ポリマー」について、安定供給を可能にする合成プロセス技術を確立した。 - NIMSら、「磁気トムソン効果」の直接観測に成功
物質・材料研究機構(NIMS)は、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、「磁気トムソン効果」を直接観測することに成功した。 - 二次元層状物質を用いた光多値メモリ素子を開発
物質・材料研究機構(NIMS)は、二次元層状物質を用いた光多値メモリ素子を開発した。照射するパルス光の強度によって、電荷蓄積量を多段的に調整することができる。 - 半導体用高純度シリコンの収率を15%以上も改善
物質・材料研究機構(NIMS)と筑波大学らの研究チームは、半導体用の高純度シリコンを生成するシーメンス法で、シリコンの収率を現行より15%以上も高めることに成功した。 - リチウム空気電池の充電電圧、上昇の原因を特定
物質・材料研究機構(NIMS)は、リチウム空気電池のサイクル寿命を劣化させるといわれている「充電電圧(過電圧)の上昇」について、その原因を特定した。リチウム空気電池の実用化研究に弾みをつける。 - シリコン基板上に単結晶巨大磁気抵抗素子を作製
物質・材料研究機構(NIMS)と産業技術総合研究所(産総研)の共同研究チームは、ウエハー接合技術を用い、磁気抵抗特性に優れた単結晶ホイスラー合金巨大磁気抵抗素子を、シリコン基板上へ作製することに成功した。