AIチップ市場、2026年まで成長率40%で伸びる:578億ドル規模へ
AIチップセット市場が、約40%の年平均成長率で成長を遂げている。大量の複雑なデータセットの存在や、顧客企業が性急に推進してきた商用アプリケーションの増加、深層学習やニューラルネットワークの幅広い普及などが後押しとなったのではないかと見られている。
AIチップセット市場が、約40%の年平均成長率で成長を遂げている。大量の複雑なデータセットの存在や、顧客企業が性急に推進してきた商用アプリケーションの増加、深層学習やニューラルネットワークの幅広い普及などが後押しとなったのではないかと見られている。
MarketsandMarketsが2020年9月に発表したAI技術関連の予測によると、世界半導体チップセット市場は2026年までに、578億米ドル規模に達する見込みだという。また今後、少なくとも半自動化された機械が増加していくことから、産業/自動車用途向けのコンピュータビジョンアプリケーション分野が、過去最高の年平均成長率で伸びていくとみられる。
一方、MarketsandMarketsのアナリストによると、グラフィックスプロセッサ市場は、機械学習モデルのトレーニングを行うデータセンターにおいて重要な役割を担っていることから、最も高い年平均成長率で爆発的な成長を遂げているという。GPU市場のリーダーであるNVIDIAがArmの買収を発表したが、それによってさらに活気づき、今後もさらなる成長拡大が見込まれるとする。
NVIDIAのCEO(最高経営責任者)であるJensen Huang氏は、この大型買収を発表した際、「Armのおかげで、NVIDIAがリーチできる開発者の数は200万から1500万以上に拡大できるようになる。また、Armの顧客はNVIDIAのAI/GPUのIPにもアクセスできるようになる」と述べている。
また、MarketsandMarketsのアナリストは、「機械学習などのAIアプリケーションは、従来よりも速度は遅いが電力効率の高いFPGAの導入を加速させていくだろう。一方でx86 CPUは、現在エンタープライズデータセンターに大きな影響を及ぼしている特定の深層学習ワークロードを加速させていく上で、引き続き補助的な役割を担っていく見込みだ」と述べる。
AIチップセットの需要は大半がAPACから
今後5年間に見込まれるAIチップセットの需要は、その大半がアジア太平洋地域(APAC)から来ると予測されている。特に、自動車および産業用途向けの製品が、中国や韓国、日本などで展開されていく見込みだ。これらの地域における主要なけん引要素としては、AIハードウェアのコスト低下や、AIチップ性能の向上の他、スマートフォンユーザーが即時性の高いサービス提供を要求することなどが挙げられる。
このため、AIハードウェアが、優れたレイテンシとリアルタイム応答性を備えることによって進化し、各地域における自動化サービスの爆発的な成長を主導していくとみられる。
今後5年間で市場優位性を確立するとみられる、大手AIチップメーカーのリストの上位には、NVIDIAとArmの他、IntelやSamsung Electronics、AMD、IBM、Xilinxなどが名を連ねる。
一方、AmazonやGoogle、Microsoftなどのハイパースケーラー企業は、AIソフトウェアスタックの分野で重要な役割を担っていくとみられる。
また、このAIチップリーダー企業のリストには、現在難問を抱えているHuawei Technologiesの名前もあるが、BaiduやTencentなどの中国の大手AIプレイヤーは見当たらない。中国の巨大クラウドAlibabaは2019年12月に、同社にとって初となるAIチップ「Hanguang 800(含光800)」を発表している。
AIチップ市場で台頭しているもう一つの企業が、イスラエルのスタートアップであるHailoだ。同社は2020年初頭に、AIチップ生産に向け6000万米ドルの資金調達を完了したところである。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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