「スマホの多眼化」がコロナ禍を吸収?イメージセンサー市場の未来は:OMDIAのアナリストに聞く(4/4 ページ)
拡大を続けるイメージセンサー市場の今後の展望やそして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響について、市場調査会社OMDIAのシニアプリンシパルアナリスト、李根秀氏に話を聞いた。
市場シェアは?コロナの影響はどう出ている?
2020年に入り、COVID-19はこれまでの市場にどのような影響を与えたのか。OMDIAの調査によると、まずCOVID-19の影響が出始めた2020年第1四半期(1〜3月)のイメージセンサー市場は39億1700万米ドルで、シェアはソニーが45.1%、Samsungが25%、OmniVisionが12.3%、ON Semiconductorが4.1%だった。直前の2019年第4四半期(10〜12月:市場規模43億7800万米ドル)ではソニーが54.1%、Samsungが17.6%であり、比較するとソニーが9ポイント下げた一方、Samsungが7.4ポイント増加した形となったという。
ただ、この状況について李氏は、「Samsungが戦略的もしくは技術的にソニーに近づいているということを意味するものではない」と説明。「そもそも季節要因があるが、そこにCOVID-19の影響のほかHuaweiの失速が直結したもので、『ソニー1社が落ちていただけ』とみるのが正しいだろう」という。実際、2020年第2四半期(4〜6月)はCOVID-19の影響が本格化しイメージセンサー市場全体が34億1300万米ドルと大きく減少、両社とも売上高を下げたが、シェアとしてはソニーが48.5%と上がった一方でSamsungは18.8%に低下、再び差が開いている。
上記のように市場のシェア自体はほぼ変化はないが、足元の環境は厳しい状況が続く。ソニーは2020年8月に行った2020年度第1四半期(4〜6月)決算において、大手顧客の最終製品販売減やCOVID-19影響によるミッド、ローエンドモデルへのシフト、中国における顧客の部品、製品在庫の大幅な調整などの影響を挙げ、2020年度の売上高がマイナス成長になる見込みだと発表。ソニーは、足元の環境変化に適応するため、顧客基盤の拡大や分散、設備投資タイミングの見直しなどを進める方針を示しており、「2021年度下期以降には事業を再度利益成長の軌道に戻す」と述べていた。
2020年9月15日には米国政府によるHuaweiに対する半導体輸出規制が発効しており、複数のメーカーが自社製品のHuawei向け出荷許可を米国に申請していることが報じられてはいるが、先行きは極めて不透明になっている。一説にはソニーのスマホ向けイメージセンサーの中で、Huaweiは2割程度を占めるともいわれているといい、李氏は、「イメージセンサーはカスタム品に近いため、Huawei向けを簡単に他の顧客に転用するのは短期では困難だ。2020年はそこに穴が開きかねないと考えている」と語っている。
「ソニー1強」に揺らぎなし?
このように足元の状況は不安定ではあるが、李氏は、今後も当面、「ソニー1強」は揺らがないとみている。
ソニーはCCDイメージセンサーの時代から市場を先行、CMOSイメージセンサーでも裏面照射型、積層型など業界の常識を覆すブレークスルーを引き起こして業界をリードし続けており、「ハイエンドCIS(CMOSイメージセンサー)は、ソニーにしかできない」とされる技術を持つ。また2018年度から3年で6500億円と大規模な設備投資も継続、2020年度第2四半期末には300mmウエハーベースで月産13万5000枚にまで体制が増強される見通しだ。
対して、競合を見てみると、シェア2位のSamsungは、「イメージセンサーについてはメモリなどで使わなくなった償却済みの工場で作り始めたものがベースだ。メモリでは大胆な投資をするが、イメージセンサーに新しく投資するというのはなかなかできないはずだ。外販が伸びれば別だが、自社のスマホにかかりっきりの状況で外部的には評価はそれほどないというジレンマがある」と指摘。また、3位のOmniVisionについても、「製造を委託するTSMCの工場は非常に高コストのため、OmniVisionの営業利益率は1桁という状況だ。同社のモデルは売り上げが右肩上がりを続けているから達成できているが、これが止まれば途端に赤字に転落する危険性がある」と分析している。
このほか、13Mピクセル(スマホ向け)の製品を発表して注目を集めるHIDM(Huaian Imaging Device Manufacturer)など中国勢についても、政府からのバックアップはあるものの、「工場を立ち上げ歩留まり比率を大手3社と同程度まで出せるかといえば、そこまでの技術力はなく、まだ5〜10年はかかるだろう」と説明。「先行する情報は派手で目を奪われがちだが、消去法で考えていけば、ソニーの敵になる会社は見えてこない」と強調していた。
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