コロナは長期投資の機会、半導体は要に:偽造チップへの懸念は残るも(2/2 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、世界各国の経済のストレスレベルは、これまでの歴史全体の中でほんの一握りしか見られなかったような状態にまで高まっている。今から約90年前に起こった、世界大恐慌以来のことになるだろう。
偽造チップへの懸念も
一方で筆者(Rambusで偽造チップ対策を担当している)は、政府の知識や熟知度、経験が不足していることに付け込もうとする者もいるのではないかと懸念している。もし偽造チップなどが出回るようなことがあれば、機器が正常に動作しなかったり、悪意のある機能(例えば個人情報を抜き取るなど)を隠し持つなど、潜在的な危険性をはらんでいる。重要な公共安全用途向けとして使われる半導体チップに予期せぬ障害が発生すれば、壊滅的な結果を引き起こす可能性がある。
現在のところ、21世紀の技術をインフラに適用して現実的な計画を実行していく上で、単純に課題やリスクが多すぎるという見解が示されているのも無理はない。しかし良いニュースとしては、短期的ソリューションとして、軍で使われている起源追跡法(provenance tracking method)を借用できるという点がある。また長期的ソリューションとしては、比較的新しい技術を利用できるチャンスも広がっている。
短期的に見ると、サプライチェーンインフラに関しては、米国の国防総省(DoD:Department of Defense)が2018年6月に発表したセキュリティイニシアチブ「Deliver Uncompromised」から教訓を学ぶことができる。このプログラムの目的は、国防総省が、意図的でない欠陥や悪意ある欠陥を排除した、極めて重要な兵器や機器、通信システムを提供する能力を高めることにある。これは基本的に、各部品の入手先や、アクセスした人物などを詳細に追跡することにより、改ざんされていないことを確認するための手法である。
また長期的には、ブロックチェーン技術を利用することで、半導体チップの信頼性を確認する機会を提供することが可能だ。ただ、新しいプロセスの導入にはコストが掛かることから、サプライチェーンでのブロックチェーンの活用は、まだそれほど普及していない。
COVID-19は、かつてないほどの規模で世界中に打撃を与えているパンデミックである。一方で、そのダメージを回復すべく、長期的な投資を検討する機会も与えているのではないか。もし各国の政府が、カーボンニュートラルな世界の実現を目指し、スマートかつ安全なインフラをはじめとする次世代のソリューションに投資する覚悟を持てば、パンデミックの危機を脱し、より健康で持続可能な世界へと変わることができるだろう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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