同時に3対象を模擬するRTS、評価時間とコストを削減:IEEE 802.3ch対応のコンプライアンスソフトも(2/2 ページ)
自動運転車の急速な発展とより優れた安全特性への需要の高まりから、感度が高く正確な車載用レーダー技術の必要性は高まっている。今回、こうした高性能のADAS(先進運転支援システム)の開発をサポートする新たな「レーダーマルチターゲットシミュレーター」を開発したキーサイト・テクノロジー(以下、キーサイト)の担当者に話を聞いた。
3つの対象物の同時に検証
また、リモートヘッドはアンテナの数(送受信に分けアンテナを2つ搭載したタイプか、送受信共用のアンテナを1つ搭載したタイプ)やアンテナの向き(本体に対して水平か平行)に分けて計4種類が用意されている。同社の担当者は、「例えばレーダーモジュールを床面に水平に置き、上側に装置を置くというような評価環境では垂直方向のリモートヘッドを用いるなど、顧客の評価環境や評価内容に合わせてカスタムできる」と説明。また、アンテナ数については、「アンテナ1つより2つで送受信を行う方が電気的特性は向上する一方で、2つのアンテナを置くと厳密にはその分の位置の誤差が生じる。顧客がより厳密な電気特性を取るか、位置精度を取るかなど、キーサイトのエンジニアが打ち合わせして提案する」と説明している。
接続できるリモートヘッドについては、具体的にはまず、目標物までの模擬距離を4〜300m(設定ステップは0.1m)まで自由に設定できるもの(Channnel 1)がある。この距離精度は±0.3mで、0.5mのケーブルが利用できる(オプションで2.0mケーブルあり。その場合の模擬最小距離は6m)。
ここに2つ(Channel 2、3)を加えることによって±90度の範囲で3つの対象物を模擬した検証が実施可能になる。なお、Channel 2、3については顧客の定義に応じ、工場出荷時に6〜300mの範囲で模擬距離が固定される(ケーブルは2m)。さらに、オプションでドップラーシミュレーションの設定も可能で、対象物がある速度で近づいたり、遠ざかったりするといった状態も模擬できる。設定可能な速度は±360km/時(設定ステップは0.1km/時)で、精度は±0.05km/時だ。
E8718Aは既に提供を開始しており、概算価格はシングルターゲット構成(本体+リモートヘッド1つ)が1800万円から、マルチターゲット構成(本体+リモートヘッド3つ)が3800万円からだ。同社は、「これにより車載用エレクトロニクスメーカーはさまざまな現実的なシナリオにおいて、自信をもってレーダーターゲットをシミュレートすることが可能になる」としている。
IEEE 802.3ch用コンプライアンステストに「初めて対応」
次世代のADASにはレーダーシステムや高分解能カメラが必要となるが、その実現にはさらなるスピードと帯域幅も求められる。同社は今回、そうした高速データ通信を可能とする車載イーサネットチャンネルのテストソフトウェアも新たに開発している。
同社ではこれまで100BASE-T1(100Mビット/秒(bps):IEEE 802.3bw)および1000BASE-TI(1Gbps:IEEE 802.3bp)に対応したソフトウェアを提供していたが、今回さらにCANの置き換えと目される低速の10BASE-T1S(10Mbps:IEEE 802.3cg)やマルチギガ対応(2.5G、5G、10Gbps:IEEE 802.3ch)にも対応。同社が提供するベクトルネットワークアナライザ―「M980xx PXI VNA」や「P5005A Streamline USB」「E5080B ENA」をサポートしており、1つのソフトウェアで4規格全てのコンプライアンステストが可能となった。
ソフトウェアの概算価格は60万円から。同社は、「これによりキーサイトはIEEE 802.3ch用のコンプライアンステストを提供する初めての会社となる」としている。
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