触覚デバイス&エミュレータで5Gの低遅延体験、KDDI:感染症対策のIoTサービスも
KDDIは、「第6回 IoT&5Gソリューション展 秋」(2020年10月28〜30日、幕張メッセ)において、エミュレータや触覚デバイスによって5G(第5世代移動通信)の低遅延を体験できるデモや、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策につながるIoTクラウドサービスパッケージなどを紹介した。
KDDIは、「第6回 IoT&5Gソリューション展 秋」(2020年10月28〜30日、幕張メッセ)において、エミュレータ触覚デバイスによって5G(第5世代移動通信)の低遅延を体験できるデモや、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策につながるIoTクラウドサービスパッケージなどを紹介した。
5Gと4Gの通信品質を模擬するエミュレータ
大手通信キャリアとして唯一の出展となったKDDI。今回は「共に歩み、共に創る 〜5G/IoTがツナグこれからのビジネス〜」をコンセプトに5Gの特性を実際に体験できるデモや、5GやIoTを用いた企業とのビジネス共創事例などを展示していた。
5Gの体験で目を引いたのは、触覚デバイスを用いた遠隔手術体験デモだ。内容は、KDDI総合研究所が開発した、5Gと4Gのネットワーク環境を疑似的に生成する「5G/4Gエミュレータ」を用い、遠隔手術体験のシミュレーターによってその遅延差を体験するというもの。5G/4Gエミュレータは、5Gと4G通信品質をIP(Internet Protocol)レイヤーレイヤーで模擬しそれぞれの接続状況を再現する装置で、5G実証実験などで実測した通信品質をシナリオ化し、さまざまな通信状況を繰り返し再現する環境を提供する。
触覚デバイスは、3D SYSTEMSのペン型デバイス「Geomagic Touch」を利用。デバイスのペン部分が遠隔手術ソフトウェアに表示される針の動きと連動しており、針が骨部分に触れると押し返す力がペンにフィードバックされる。ここで通信の遅延が大きいと、押し返す力がフィードバックされる前にそのまま針が移動できてしまい、その間の操作をソフトが「3Dオブジェクトにめり込むほどの大きな力」と誤認識。必要以上の大きな反力で押し返され、正しい操作が困難になるという。
今回のデモでは、4Gの場合の通信遅延は80ミリ秒程度となっていたのに対し、5Gでは5〜6ミリ秒程度の低遅延になっていた。実際に筆者が体験したところ、4G環境での操作の場合、ペンの動きと画面の動きに遅れが感じられたうえ反力も激しく、思った場所に針をなかなか移動させられなかったのに対し、5G環境の場合は意図したように簡単に動かすことができた。なお、このデモはあくまで5Gの低遅延を分かりやすく体験するために用意したものであり、「遠隔手術ソリューションをKDDIが提供する、というわけではない」という。
また、会場となった幕張メッセは同社の5Gエリア内となっており、今回、同社はauの2020年初夏モデルの各5G端末も展示。来場者は実際に手に取って5Gによる通信を体験していた。
このほか、「5G時代の共創事例」として各社との協業事例も紹介していた。例えば、DMG森精機が開発した、工作機械の加工中に発生する切りくずの除去をAIで自動化するソリューションについても展示。両社は2020年4月にDMG森精機伊賀事業所、7月には東京グローバルヘッドクオーターに5G環境を構築。2拠点で5Gが持つ高速、大容量、低遅延の特性を活用した、生産性向上に貢献するソリューションの開発を推進しており、今回紹介したソリューションに関しては、5Gの高速、大容量という特長を生かすことで、工作機内の大量の画像データ収集を加速させ、より高度なAI機能実装の有効性を検証してきたという。
コロナ対策につながるIoTクラウドサービスパッケージ
また、KDDIはCOVID-19対策となる「KDDI IoTクラウド Standard サーマルカメラパッケージ」のデモも展示。これは、WDSのサーマルカメラセンサー「EG-Keeper」によって約0.3秒で人物の体表面温度およびマスク着用の有無をセンシングしその結果をセンサー上で表示するとともに、データをクラウド上に保存(計測した温度や属性情報のテキストデータのみ)し、閾値によるメール通知を行うというもの。コロナ禍における感染症対策としても期待でき、企業オフィスなどを中心に導入が進んでいるという。
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