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3D NANDフラッシュのコスト削減モデル福田昭のストレージ通信(180) アナリストが語る不揮発性メモリの最新動向(7)

今回は3D NANDフラッシュのウエハー当たり製造コスト(ウエハーコスト)が世代交代でどのように変わるかを解説する。

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ウエハー当たりの製造コストは世代ごとに増加

 フラッシュメモリとその応用に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」が2020年11月10日〜12日に開催された。FMSは2019年まで、毎年8月上旬あるいは8月中旬に米国カリフォルニア州サンタクララで実施されてきた。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的な大流行(パンデミック)による影響で、昨年(2020年)のFMS(FMS 2020)は開催時期が3カ月ほど延期されるとともに、バーチャルイベントとして開催された。

 FMSは数多くの講演と、展示会で構成される。その中で、フラッシュメモリを含めた不揮発性メモリとストレージの動向に関するセッション「C-9: Flash Technology Advances Lead to New Storage Capabilities」が興味深かった。このセッションは4件の講演があり、その中でアナリストによる3件の講演が特に参考になったので、講演の概要をご紹介する。

 なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

 本シリーズの第4回から、半導体メモリのアナリストであるMark Webb氏の「Flash Memory Technologies and Costs Through 2025(フラッシュメモリの技術とコストを2025年まで展望する)」と題する講演の概要を紹介している。第4回は、3D NANDフラッシュメモリ(以降は「3D NANDフラッシュ」と表記)大手の近況を、第5回(前々回)は中国の3D NANDフラッシュベンチャー、YMTC(Yangtze Memory Technologies Co., Ltd.)の現状を、第6回(前回)は次世代3D NANDフラッシュの姿をご報告した。今回は3D NANDフラッシュのウエハー当たり製造コスト(ウエハーコスト)が世代交代でどのように変わるかを解説する。


講演の目次。今回は目次の3番目に関する講演部分をご説明する。出典:FMS 2020の講演「Flash Memory Technologies and Costs Through 2025」の配布資料(クリックで拡大)

 まず、3D NANDフラッシュのウエハー当たり製造コスト(ウエハーコスト)は、技術世代ごとに増加するという事実から始めたい。コスト増の基本的な理由は、世代ごとにメモリセルの積層数が30%〜50%ほど高層化することだ。過去の世代で見ると、64層から96層への変化では積層数が50%増となった。96層から128層への変化では、積層数は33%増である。積層数の増加は当然ながらスループットの低下、すなわち生産効率の低下とウエハーコストの上昇を招く。

スループットの向上で製造コストの増加を緩和

 ウエハーコストの増加要因は、ほかにもある。メモリセル(ストリング)の積層を2段階に分けることでメモリスルーホールの製造を容易にするスタック(ティアー)構造は、プロセスのステップ数を増やし、スループットを低下させ、製造コストを上昇させる。CMOSロジックの周辺回路をメモリセルアレイと重ねるCUA(CMOS Under Array)構造も、同様である。


3D NANDフラッシュメモリの製造コスト(ウエハーコスト)削減モデル。出典:FMS 2020の講演「Flash Memory Technologies and Costs Through 2025」の配布資料(クリックで拡大)

 具体的には、新しい世代の3D NANDフラッシュではウエハーコストが前の世代に比べておおよそ10%〜15%ほど高くなる。一方、製造に習熟することで従来技術のウエハーコストは毎年、5%〜10%ほど低下する。

 ウエハーコストの増加を抑える手法の基本的な考え方は、スループットの向上である。厳密にはスループットを前の世代と同じ程度に維持する必要がある。そして実際に、3D NANDフラッシュの製造効率は当初の予測を上回る勢いで向上している。その詳細は、次回でご報告したい。

次回に続く

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