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作り手の“腕の見せ所”、「Apple Silicon M1」の層数を解析するこの10年で起こったこと、次の10年で起こること(50)(1/4 ページ)

今回は、「Apple Silicon M1」の断面を解析し、層数や配線について解説する。配線に満ちている電子機器では、配線や配置は「腕の見せ所」ともいえる重要な技術だ。

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配線に満ちている電子機器


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 電子機器の全てはトランジスタ、容量、抵抗などの部品でできている。部品と部品を接続するためには、配線や部品と配線をつなぐプラグやピラー、配線同士をつなぐコンタクト、モジュール同士をつなぐボールが必ず必要になる。チップ内にも複数の配線層があり、チップを封じ込めるパッケージも複数の配線層でできている。チップとパッケージの接続にはワイヤボンドでつなぐ場合もあれば、再配線層と呼ばれるチップ上に配線を形成し、さらにその上にボールを置いて接続する場合もある。これらも配線の一種だ。

 チップのパッケージはPCBに設置される。PCB上には受動素子、チップ、機器の端子などが設置される。このベースとなるPCBもまた内部は多くの配線が行き交っており、小型化やシステムの複雑度が上がっており、多層配線で構成されるPCBが現在はほとんどである。

 電子機器は配線に満ちているわけだ。配線が長いと抵抗成分が大きくなる。また配線それ自体の持つ容量成分や、隣り合う配線の容量や動作の影響も受けやすくなる。カップリングやクロストーク、信号のなまりなど、電子機器の長年の課題は配線によって生じている(当然ながらトランジスタの駆動能力が高ければ解決するものもある)。

配線の作り方は「腕の見せ所」

 いかに最適な配線を作るかは、各メーカーの最も差が出るところであり、ある意味、「腕の見せ所」となっている。また配線は1層増えるだけでも必ずコストアップになる。最も良い製品とは最適な配線構造で構成され、かつ電気的特性もよく、層数が少ない物である。

 そのために重要なのが「配置」だ。そもそもの配置が間違っていれば、行き戻りする経路が生まれてしまうため、配線が増えてしまうからだ。ABCという順序回路をABCの順に配置すれば3本の最短長配線は済む。しかし、ACBと配置すればAからBに行き、BからCに戻るという行き来の配線が生じてしまう。配置のよしあしで配線も決まってしまうわけだ。

 図1は、2020年11月にAppleから発売された「MacBook Air」の様子である。梱包箱の外観と、背面のカバーを取り外してコンピュータ基板を取り出した様子、MacBook Airを駆動する「Apple Silicon M1」(以下、M1)の写真だ。これらがどのような配線構成、構造でできているかを、断面を切断して解析したので報告したい。


図1:2020年11月に発売された「MacBook Air」と、搭載されているプロセッサ「Apple Silicon M1」 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

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