「コロナワクチン」接種の前に、あの医師が伝えておきたい7つの本音:世界を「数字」で回してみよう(66)番外編(7/11 ページ)
いよいよ始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種。コロナ禍において“一筋の光”でもあるワクチンですが、変異株の増加など心配なことも増えています。今回は、前回に続き、あの“轢断のシバタ先生”が、ワクチンそのものに対する考え方や変異株の正体、全数PCR検査の机上シミュレーションなど、読者に伝えておきたい7つの“本音”を語ります。
慣れは怖いです。基本が大切です。
買い物に出かけると、見渡す限りほぼ全員がマスクをしています。「かくあるべし」と言う社会的圧力(同調圧力)に対する感受性がこれほどまでに高いことに、大変ありがたいことであると感じると共に、若干の危機感を覚えます。
さて、流行当初はインフルエンザの対応にならってWHOはマスクの感染予防効果は限定的という態度でした。これは、欧米自由諸国の常識として、社会全体、人口のほぼ全員がマスクをするようなことは想定せず「装着者が感染者からどれくらい守られるか」についての効果から論じた結果と思います。
しかし、現在ではマスクの効果について「無症候感染者からの飛沫拡散を未然に防ぐ」=「他人にうつさないためのマスク」という観点が評価され、「社会全体でマスクを装着した場合には感染拡大速度を低下させる効果がある」というコンセンサスがほぼ得られたと言って良いと思います。CDCもマスクの着用について肯定しています(参考)。
有名科学雑誌natureの姉妹紙nature medicineでも、「米国において95%が公共の場でマスクを使用する’universal mask use’が達成された場合、死亡者数が減少すると予測される」という研究が掲載されていました。
「単独の効果としては『他人にうつさない>自分を守る』ですが、全員がマスクをすれば自ずと自分を守ることにつながる」「シンガポールや中国や日本でできたことが、欧米でできないわけが無い」ということで、今や世界中でuniversal mask useが公衆衛生上の常識となりつつあるようです。
しかし、ここで個人的に忘れてはならないと思うことがあります。
過去の記事(「ある医師がエンジニアに寄せた“コロナにまつわる現場の本音”」)において、「マスクをしていた群とマスクをしていなかった群を比較したら、マスクをしていた方が風邪をひきにくかった」が、しかし、「マスク装着群とマスク非装着群をランダムに割り振って風邪の感染率を検討したら、差が消えた」というお話をしました(結構な反響があったようです)。
要旨としては、マスクの効果とは「行動変容への意識」の面が強いということ ―― すなわち、
「感染意識が欠如した単なるファッションマスクだけでは感染防御の効果が不十分である」「感染防御は、うがい・手洗い・3密回避・孤食黙食・人前で歌わない、叫ばない、などの徹底した行動変容とマスクがセットになって初めて十分な効果が達成される」 ―― ということです。
しかし、日本においてはuniversal masuk useが既に浸透しており、マスク装着群が圧倒的多数になっているにもかかわらず、Rtが年末のピークで2に近い数値となり、結果として医療崩壊が発生したのです*)。
*)そういえば、どうみても、あの時点で、完全に医療崩が壊発生していたのに、「医療崩壊の恐れ」と言葉を濁していたんでしょうか。(江端)(著者のブログ)
「マスク着用さえすればよいという安心感and/or慣れ」に”マスク”されて、「行動変容への意識」がないがしろになってはいないでしょうか?
基本の忠実な継続こそが最も大切な事項であり、そして最も困難です。私も使用済みマスクの放置と帰宅直後のアルコール消毒省略の件でよく妻に叱られています。「隗より始めよ」ということで、私も自分の普段の行動を見直さなければ行けません。
行動が変化すれば、Rtは確実に、そして良い方にも悪い方にも正直に変動します。感染防御の基本行動を徹底することで、Rtは必ず低下します。
もし政府が“GoToキャンペーン”を実施せずに、東日本大震災後のAC広告くらいの頻度(しつこさ)で、行動変容を1年中アピールし続ければ、2020年6〜7月の状況をキープできたのではなかろうかと勝手に想像していますが……。志村けんさんの死を無駄にしないためにも、気を引き締めたいと思います。
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