画像検査AI技術を開発、異常箇所を高精度に検出:製品の検査工数を25%も削減
富士通研究所は、多種多様な外観の異常を高い精度で検出できる「画像検査AI技術」を開発した。異常を検出するAIモデルの性能を測定する指標「AUROC」で、98%という世界最高レベルを達成した。
AIモデルの性能指標「AUROC」は98%を達成
富士通研究所は2021年3月、多種多様な外観の異常を高い精度で検出できる「画像検査AI技術」を開発したと発表した。異常を検出するAIモデルの性能を測定する指標「AUROC」で、98%という世界最高レベルを達成した。
製造ラインの検査工程では、大まかな形状や細部の構造、質感などについて、これまでは専門の検査員が目視や監視カメラで確認し、合否の判定を行ってきた。これらの作業を効率化するため、AIの導入が進んでいるという。ところが、現場で発生する以上は多種多様で、その頻度も極めて少なく、異常を効率よく検出できるAI技術が求められていた。
開発した画像検査AI技術は、撮影した製品画像で外観異常箇所を検出すると、AIが異常箇所を取り除いて正常画像を復元する。そして、検査した画像と復元した正常画像の差分を比較して異常箇所を検出するという。
今回は、AIモデルを学習させる方法を新たに開発した。それは、学習用に用意した正常画像に、形や大きさ、色などの異常を人工的に付加した画像を生成しながら、これらの異常を取り除いた正常な画像を復元できるようにした。これにより、正常画像を復元する性能が向上し、従来のように異常を含んだ画像を教師データとして準備する必要がないという。
特に学習時は、正常画像とAIが復元した画像を比べ、大まかな形状や細部の構造、質感といった特徴の学習度を評価する。そして、AIが捉えられていない特徴を優先的に学習するよう、「付加する異常の大きさ」や「色」「個数」を制御する。こうした工夫により、全ての特徴を捉えた正常画像を復元できるようになった。
さらに、人工物を撮影した5000種以上の画像ライブラリーから、形や大きさ、色が異なる素材を生成し、異常の個数や付加する位置を確率的に変える技術も新たに開発した。これによって、さまざまな異常箇所の検出が可能となった。
富士通研究所は、開発した画像検査AI技術の有効性について検証を行った。富士通インターコネクトテクノロジーズ長野工場の検査工程に同技術を導入し、プリント基板の検査工数を25%も削減できる効果を確認した。
今後は、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を支える技術として、検出した異常を種類や検出箇所に応じて分類する機能を開発していく。さらに、ものづくり事業ブランド「COLMINA(コルミナ)」への製品適用を目指すという。
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