「バンクシーの絵を焼き、NFT化する」という狂気:踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(12)ブロックチェーン(6)(2/9 ページ)
「ブロックチェーン」シリーズの最終回となる今回は、ここ数カ月話題になっている「NFT(Non-Fungible Token)」を取り上げます。バンクシーの絵画焼却という衝撃的(?)な出来事をきっかけに広がったバズワード「NFT」。これは一体、何なのでしょうか。いろいろと調べて考察した結果、「バンクシーの絵画を焼いた奴はバカ」という結論に達した経緯とともに解説します。
今ホットな「NFT」
こんにちは。江端智一です。
今回は、ブロックチェーンシリーズの最終回です。最終回とした主な理由は、この連載を通じて、"私"がブロックチェーンの仕組みが分かってきたことと、ブロックチェーンを使ったアプリケーションのネタが、少なくなってきたことに因ります。
今回のテーマは、ブロックチェーンを使った「フェイクニュース対策」をネタにしようと思っていたのですが、そもそもブロックチェーンの解説記事の多くが「フェイク」……とまでは言わないでも、「技術的にデタラメ」な話が多いです(後半に登場します)。ですから、『このネタは、まだ、時期尚早だな』と考えました。
加えて、先ほどお話した「バンクシー作品の焼却処分」や、後で登場する「"Everydays: The First 5,000 Days"のNFT、76億円落札」などのネタの方が、タイミングが良さそう、と考えて、思い切って方向転換しました。
では、本シリーズ最終回である今回は、たまたま、今現在進行形でホットな話題である「非代替性トークン(Non-Fungible Token、以下、NFTという)」を取り上げてみたいと思います。
NFTは、仮想通貨のブロックチェーンシステムを援用して、無体物/有体物などの制限なく、その“モノ”の「所有権の主張」を可能とする仕組みであり、そのバリエーションの多さから、多くの人から期待されています。
しかし、このNFTもまた、他のバズワードと同様に、妙なイベントがぶち上がり、それに乗せられた人が ―― きちんと自分で検証を行わずに騒ぎ出す ―― という状況が見られます。
今回は、これらの話を含めたNFTの全体像に迫りたいと思います。
ブロックチェーンを(しつこいけど)おさらいしよう
さて、この連載も今回で6回目となり「しつこい!」という声も聞こえてきそうなのですが、最後にもう一度だけブロックチェーンの概要を説明したいと思います。
ブロックチェーンとは、複数の人が所有する記録台帳のことです。台帳の中身は、基本的になんでも構いません。誰かが誰かにビットコインを送金したという記録でもいいですし、家の鍵を渡して家賃をもらったという記録でもいいですし、誰かに投票したという記録でもいいです。
その台帳は、複数の人が持っていますので、これを分散台帳ともいいます。ポイントは、その全てが「原本ではない」という点です。では、どの台帳を信用するかというと、「ページ数が一番多い台帳を信じる」という簡単なルールだけがあります。2冊以上の台帳をもっている人は、ページ数が一番多い台帳以外は、全て捨ててもらいます。
ただし、この台帳の記載には、ちょっとしたクセがあります。台帳の新しいページには、その前のページのハードコピーの写し(コピペ)を張りつけておく、というものです。
なぜ、こんなことをするかというと、台帳のどこかのページを「書き換えよう(改ざんしよう)」とすると、全部のページを書き換えなければならないことになるからです。しかも、この台帳は、世界中の複数の人のところに散らばっています。
つまり、その台帳の改ざんは、事実上不可能なのです。これは、この「台帳に記載されたことは信用しても良い」と取り扱って、問題がないということです。
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