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「バンクシーの絵を焼き、NFT化する」という狂気踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(12)ブロックチェーン(6)(6/9 ページ)

「ブロックチェーン」シリーズの最終回となる今回は、ここ数カ月話題になっている「NFT(Non-Fungible Token)」を取り上げます。バンクシーの絵画焼却という衝撃的(?)な出来事をきっかけに広がったバズワード「NFT」。これは一体、何なのでしょうか。いろいろと調べて考察した結果、「バンクシーの絵画を焼いた奴はバカ」という結論に達した経緯とともに解説します。

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「NFT」の問題点

 そもそも、NFTの仕組みは、とても簡単です。登録さえしてしまえば、所有権が主張できる、というものです ―― で、普通に考えれば、こういうことが、簡単にできてしまうハズです。

 NFTは基本的にはブロックチェーンという分散台帳システムです。NFTのシステム(プラットフォーム)は、それ以外のことは何もしません。上記のような不正なNFTの作成を阻止することなんかできません。

 ちなみに、ビットコインのブロックチェーンでは、ビットコインの発掘屋(マイナー)たちに、コンセンサスアルゴリズムに基づく、壮絶なバトルゲームを展開させることで、この問題を回避しています(関連記事:「ビットコインの正体 〜電力と計算資源を消費するだけの“旗取りゲーム”」)。

 仮に自分のコンテンツを、適法に登録して、所有権の主張ができるようになったとしても、コンテンツビジネスは簡単ではありません。

 著作物というのは、原則として、他の著作物を“利用”するものだからです。その権利の調整は、絶望的に困難で、想像を絶する苦労を伴うものなのですが ―― NFTは、そんなことには一切関わりません。相変わらず、ただ「これは私のモノだ」を主張するだけです。


出典:https://biz-journal.jp/2013/04/post_1872_3.html

 私、いろいろな文献を調べてネットの中を探し回り、さらにはYouTubeのNFTに関する解説動画を見ました(日本語のものは、多分全部視聴したいと思います)。

 その中の内容を、全てノートに書き出して、技術的観点から自分なりに検討を行い、その内容の正否を判断しました ―― そして、愕然としました。

 では、以下の表をご覧ください。

 面倒なので、一つ一つを説明することはしません(理由/実例に記載してあります)が、よくもまあ、ここまでの「デタラメ」を並びたてられるものだと、感心しました。

 百万歩ゆずって、『NFTを使って、新しいアプリやサービスを作れば、こういう問題を解決できるようになるかもしれない』なら許せますが、『NFTによって上記の問題が解決される』と断言している姿には、呆れる、を通り越して、ある種の感動を覚えたくらいです。

 なお、上記の私の検討結果に対して反論のある方は、ぜひ、私にご一報ください。連絡先はこちらをご利用ください→"blockchain_20201122@kobore.net"。ご連絡頂いた方の個人情報を完全に秘匿して(by 江端ファイアウォール)、掲載のご許諾を頂いた後に、全文を私のブログで公開させて頂きます。

 それ以外にも、NFTについて、以下の表のような問題点に気が付きました。しかし、私でなくても、真剣に考えれば、誰だって、以下のような疑問は、普通に生じてくるはずです。そして、私が挙げた問題点のいくつかは、現実に「問題」となっていたのです。

 特に、#3の「なりすまし登録」については、NFTの取引所が、製作過程の画像のアップロードも要求するなどの対応をしているようですが、製作過程の画像自体を偽造されたら、もう手が打てません。

 さらに、私が、最も現実的な問題と考えているのが、#4の「リンク切れ」問題です。例えば、私が死亡して、プロバイダーへの支払が滞り、ホームページ(kobore.net)を削除されてしまったら、NFTの価値は、その瞬間に消滅します。デジ絵といえども、きちんと実体を所持/管理していないと、こういう事故は100%発生します。

 また、#6で述べているのは、ビットコインの解説の際に散々お話した「信用の化体」と同じ内容となります。現時点でのNFTの信用は全くの未知数です。

 ネットを見ていると、「NFTすごい! 儲かる! 誰でもできる!」を連呼している記事ばかりで食傷気味です。ちなみに、技術面からキチンと説明している記事は、私が知る限り、絶無でした。

 私なりの結論をまとめますと、「NFTは『所有権の主張』にお墨付きを与えてくれるIT技術の一つにすぎず、権利問題を解決するソリューションは一つも持っていない」となります。



 このように考えていけば、“NFT”もブロックチェーンブームに乗っかった「バズワード」と言えます。

 そして、これもバズワードにありがちなのですが、その立ち上げ時において、妙なイベントがぶち上がり、それに乗せられた人が ―― きちんと自分で検証を行わずに騒ぎ出す ―― という点においても同じです。

 普通に考えれば「変だな」と思うことであったとしても、自分に縁のない技術(ハッシュ関数、公開/秘密鍵/電子署名等)の話が出てくると、面倒くさくなって、検討作業を投げ出してしまうのです。

 そして、『きっと、この辺もうまく行くようにできているに違いない』と勝手に思い込み、『他人にデタラメを吹聴し始める』のです。

 その辺の説明ができる技術力を持っているエンジニアや研究員は、それについて警鐘を鳴らす立場にあるはずなのですが ―― 私たち、エンジニアや研究員は、無言を貫きます。なぜでしょうか?

 ―― バズワードに関わる技術には、研究費/開発費の予算が簡単に付くから

です。

 世間がどれだけ、バズワードに踊り狂おうが、まず、エンジニア/研究員は、自分の仕事を確保することが第一です。そのために、どこかの誰かがNFTに投資して破産しようとも、『そんなの関係ねえ!』(小島よしおさん風)です。

 閑話休題。

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