Apple、Samsung、Huawei――出そろった5nmチップを比較する:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(52)(1/3 ページ)
Apple「iPhone 12」シリーズを皮切りに、ハイエンドスマートフォン市場では5nmプロセスを適用したプロセッサを搭載したモデルが続々と投入されている。一通り出そろった5nmチップを比較してみよう。
一気に5nmプロセスに置き換わったAppleのプロセッサ
Appleは2020年10月、新型スマートフォン「iPhone 12」シリーズを発売した。そこに搭載されているのが、5nmプロセス技術を量産に適応した世界初のチップとなる「A14 BIONIC」である。AppleはiPhone 12だけでなく、新型「iPad Air」にもA14 BIONICを採用した。翌11月には同じく5nmプロセスを活用した「Apple Silicon M1」を用いた「MacBook Pro」「MacBook Air」、さらに「Mac mini」を同時に発売した。2020年秋から冬にかけて、Apple製品は一気に現在最先端のプロセス技術である5nmを用いたプロセッサに置き換わったのである。
同時期に中国Huawei/HiSiliconも、5nm適用の「Kirin 9000」を用いた最先端のスマートフォン「Mate 40 Pro」を発売している。
2020年末時点では、5nmプロセスのプロセッサを用いたスマートフォンを発売したのは、上記AppleとHuaweiの2社であった。いずれも台湾TSMCが製造している。こうしてTSMCが先行し、5nmの時代がスタートした。
Samsungの5nmを用いた製品も続々と登場
そして2021年早々、先行するTSMCを追撃する形で、Samsung Electronics(以下、Samsung)の5nmプロセスで製造されるプロセッサが続々と大型製品に採用され始めている。今回はそのあたりを中心に報告する。
図1は2021年1月に中国Xiaomiから発売されたハイエンドスマートフォン「Mi 11」の分解写真である。背面カバーを取り外し、メインのコンピュータ処理基板を取り出して、プロセッサ部を拡大した。プロセッサはPOP(Package On Package)で実装されており、上PackageはDRAM、下Packageはプロセッサという構造になっている。
本製品には108M(1億800万)画素のCMOSイメージセンサーがメインで活用され、カメラ機能にも力を入れたものになっている。DRAMは8GBのLPDDR5、プロセッサは米Qualcommの最新プロセッサ「Snapdragon 888」となっている。DRAMは12GBも選択できるが、弊社では8GBバージョンを分解した。
図2は2021年1月に発表され、同月に販売開始になったSamsungのハイエンドスマートフォン「Galaxy S21 Ultra 5G」である。背面カバーを外した様子、コンピュータ基板、プロセッサ部の拡大を示した。
プロセッサは図1のXiaomi Mi 11と同じQualcommのSnapdragon 888が採用されているが、DRAMは12GBのLPDDR5となっている。カメラはXiaomi Mi 11と同じく108M画素のCMOSイメージセンサーをメインで採用した4眼カメラだ。
Xiaomi Mi 11との大きな違いは、基板が2層構造になっていること。Mi 11は1層基板だが、Galaxy S21 Ultra 5Gは2層基板構造となっている。
1層目が通信用とトランシーバーとパワーアンプ、2層目はプロセッサ、メモリに分かれているという特徴がある。ハイエンド機では、AppleもHuaweiも2層基板構造を用いている。Samsungも5G世代では常に2層基板構造だ。Mi 11はハイエンド機種にもかかわらず、1層基板で仕上げている。さらに、Xiaomiの基板にはノイズに強くなる工夫が組み込まれている(詳細はテカナリエレポートで報告、本投稿では省略)。
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