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Wi-Fiの2.4GHz帯電波で発電、東北大学らが開発自由層の磁化方向を斜めに

東北大学とシンガポール国立大学の共同研究チームは、Wi-Fiに利用される電波を活用して、効率よく発電を行う技術を開発した。実証実験では、2.4GHzの電磁波を直流電圧信号に変換しコンデンサーを5秒間充電したところ、LEDを1分間発光させることに成功した。

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直列接続の素子8個で5秒間充電、LEDを1分間発光

 東北大学とシンガポール国立大学の共同研究チームは2021年5月、Wi-Fiに利用される電波を活用して、効率よく発電を行う技術を開発したと発表した。実証実験では、2.4GHzの電磁波を直流電圧信号に変換しコンデンサーを5秒間充電したところ、LEDを1分間発光させることに成功した。

 共同研究チームは今回、磁気トンネル接合というスピントロニクス素子を用いた。磁気トンネル接合素子は、発振や整流の機能を持ち、高周波の電気信号や電磁波の送受信が可能だという。既に、不揮発性メモリの記憶素子や磁界センサーとして実用化されており、今回の素子も同等の材料系で構成している。ただ、これまでの磁気トンネル接合素子は、単体で用いると十分な信号強度が得られなかったという。

 そこで研究チームは、2.4GHz帯の電波を活用して効率よく発電できるように、特性を制御した磁気トンネル接合とその接続技術を新たに開発した。開発した磁気トンネル接合は、絶縁体(MgO)を強磁性材料のCoFeBからなる自由層と固定層で挟んだ構造にした。


今回用いた磁気トンネル接合と原理実証実験の模式図 出典:東北大学

 ここで重要となるのが「自由層における磁化方向」だという。今回は、自由層の膜厚と形状を精密に制御することで、磁化が安定状態で斜め方向を向くように設計した。この結果、微弱な入力で大きな出力が得られるようになった。通常、薄膜磁性体の磁化方向は、膜面内方向か膜面直方向のいずれかを向くという。

 研究チームは、開発した磁気トンネル接合を用いて、「直列接続」と「並列接続」をした時の出力について調べた。この結果、並列接続はDC(直流)からAC(交流)を生成するのに適していることが分かった。一方、直列接続の場合は、2.4GHzの高周波電流を入力した時に発生するDC電圧が、入力電圧当たり20200mV/mWになった。これは、現行ショットキーダイオードの特性をしのぐ値だという。

 研究チームは、簡易デモシステムを用いて環境発電の原理実証実験を行った。デモシステムは、直列接続された8個の磁気トンネル接合、コンデンサー、昇圧コンバーターIC、1.6Vで発光するLEDなどからなる。実験では、2.4GHzの電波を直流電圧信号に変換し、これをコンデンサーに充電した。これによってLEDを1分間も発光させることができると実証した。

 なお、今回の研究は東北大学電気通信研究所の深見俊輔教授や大野英男教授(現東北大学総長)らと、シンガポール国立大学のHyunsoo Yang教授らによる研究チームが共同で行った。

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