Intel元社長が創設したAmpere、順調に成長:データセンター分野で勝負に挑む
Ampere Computing(以下、Ampere)は順調に成長を続けている。2020年に発売した80コアプロセッサ「Altra」は順調に顧客を獲得しており、同社はそのうち数社をついに公表した。128コアの「Altra Max」は現在サンプル出荷中で、Ampereが公言していた通りの処理速度を実現している。
Ampere Computing(以下、Ampere)は順調に成長を続けている。2020年に発売した80コアプロセッサ「Altra」は順調に顧客を獲得しており、同社はそのうち数社をついに公表した。128コアの「Altra Max」は現在サンプル出荷中で、Ampereが公言していた通りの処理速度を実現している。AmpereのCEO(最高経営責任者)を務めるRenee James氏は米国EE Timesのインタビューで、Altra Maxは「注目を集める製品になる」と述べている。さらに2022年に、Altra Maxの後継製品(名称は未定)をサンプル出荷する計画だという。
Ampereは、Intelの元幹部であるJames氏が、Intelの強みであるデータセンター向けプロセッサに対抗するという野望を持って2018年に設立した。だが、Ampereの設立から時をおかずして、復活したAMDが同市場をけん引し始め、一部の大手データセンター事業者が独自チップの設計に着手し、かつてAmpereのパートナーだったNVIDIAがデータセンター市場で争う意向を明らかにした。さらに、言うまでもないが、たくさんのスタートアップ企業がデータセンター向けAI(人工知能)アクセラレーターの設計に参入している。
James氏と同社のCPO(最高製品責任者)を務めるJeff Wittich氏は、このように競争が激化する中で顧客からの了承を得てリストを公開できたことをうれしく思っているという。今回発表されたリストには、最大の新規顧客である中国のTencentの他、ByteDanceやEquinix、CloudFlare、uCloudの名前も見られた(MicrosoftとOracleは既に公表されている)。OEMおよびODMメーカーに関しては、Ampereは以前にGigaByteとの提携を発表している。さらに今回、FoxconnとInspur Groupとの提携についても明らかにした。
これらの企業は全て80コアのAltraの顧客だ。顧客企業が将来、何を購入するかは分からないが、Ampereの明確な価値提案は、データセンターのワークロードに最適化されたプロセッサを提供することであり、プロセッサコア数にほぼ比例する形で性能を向上した後継製品を1年に1世代ずつ発表している。こうした戦略によって、データセンターの性能を毎年改善するための明確なロードマップを顧客企業に提供している。このような価値提案を考えると、現在Ampereの製品を使用している顧客企業が今後も使い続けることは容易に推察される。
最も成功した息の長いIC企業は、何十年もの間、ムーアの法則に沿っておよそ2年ごとに改善を行っている。ただし、これらの改善は常にグラフ上の右肩上がりの直線のように実現されるとは限らない。これに対し、Ampereはより大きな性能向上を掲げ、より速いペースで公約通りに改善を実現している。最近の発表は、それを実証するものとなっている。
Ampereはまた、プロセッサの性能がコア数に比例して向上していることを示すデータも公開した。一方で、AMDとIntelのプロセッサではコア数と性能が比例していないことも示されている。
Wittich氏は、x86ベースのプロセッサの性能がコア数に応じて向上しない主な理由として、x86アーキテクチャがハイパースレッディングに依存していることを挙げる。ハイパースレッディングではリソースを共有する必要があるため、コア数を増やしたい場合は「周波数を下げなければならない」(同氏)という。
Ampereの80コアのAltraと128コアのAltra Maxは、どちらもArmコア(ただし、同じコアではない)ベースで、7nmノードで製造されている。まだ名前のない次世代品もArmコアベースで、5nmで製造される予定だという。
Wittich氏によると、独自の設計を行っていることで、Ampereはコアと機能セットを年単位で調整することができるという。「Armはそれほど速いペースでコアを発表しない。当社の顧客は、クラウドに特化した機能や性能を、より早いサイクルで求めていると考えた」(同氏)
Ampereは、以前よりも電力効率の良さを強くアピールしている。それは、データセンターにとって消費電力の低減がますます重要になっているからだ。
消費電力の制御は、運用面では常に重要だが、現在ほとんどの事業者がカーボンニュートラルを目指すという形で、消費電力の削減を公約している。これらの目標を公表したことで、事業者はその責任を負うことになったとWittich氏は述べる。
James氏は「半導体企業を創設したからには、以前に比べて劣る結果を出すわけにはいかない」と述べた。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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