検索
連載

日本の半導体ブームは“偽物”、本気の再生には学校教育の改革が必要だ湯之上隆のナノフォーカス(39)(1/6 ページ)

今や永田町界隈は「半導体」の大合唱であるが、筆者はそれを「偽物のブーム」と冷めた目で見ている。もはや“戦後の焼け野原状態”である日本の半導体産業を本気で再生するには、筆者は学校教育の改革から必要だと考えている。

Share
Tweet
LINE
Hatena

世界中に半導体ブームが到来


連載一覧はアイコンをクリック

 2021年に入った途端に、車載半導体不足が発覚し、あらゆる半導体が不足する事態になり、世界中が狂乱状態となった(拙著記事『“半導体狂騒曲”、これはバブルなのか? 投資合戦が行き着く先は?』、2021年5月20日)。

 それとともに、各国が、自国内で半導体製造を強化する動きが激しさを増している。同年6月3日付の日経新聞によれば、2020年からTSMCの誘致に動いていた米国は、工場や研究開発拠点を国内に設ける企業に対して、5年間で約4.3兆円の補助金を交付することを検討している。加えて、米国上院が2021年6月8日、520億米ドルを国内の半導体研究/製造に割り当てるという前例のない法案を可決した

 また、欧州連合は、半導体を含むデジタル分野に今後2〜3年で約19兆円を投資する方針である。さらに、中国は2014年にIC基金を設立し半導体関連技術に5兆円を超える投資を行い(総額は約20兆円と聞いている)、地方政府にも計5兆円を超える基金を設立した。

 そしてTSMCを擁する台湾は、国内への投資回帰を促す補助金などの優遇策を始動し、ハイテク分野を中心に累計2.7兆円の投資申請を受理したという。加えて、メモリ大国となった韓国は、官民協力して、今後10年間に約50兆円を投じ、韓国内に「K半導体ベルト」なる半導体供給網を整備する模様である(聯合ニュース、6月5日)。

永田町界隈も半導体ブーム一色

 この半導体ブームは日本にも押し寄せている。菅内閣は6月18日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定する予定で、その成長戦略には、「6割超を輸入に頼る半導体について国内生産の拡大を目指す」という内容が盛り込まれる見込みである(日経新聞6月13日)。

 また、自民党には甘利明元経産相を会長に据え、安倍晋三元首相と麻生太郎財務大臣を最高顧問とする「半導体戦略推進議員連盟(以下、議連)」なるものが立ち上げられた。この議連については、「安倍・麻生・甘利」の3人の頭文字をとって、「A・A・A(スリーエー)」などと報じられているが、これを見た時、筆者は「何かの悪い冗談」ではないかと思った。「A・A・A」というより、「あ、あ、あ……(驚がくと絶望のため息)」である。それほど、この3人と半導体は結び付かない。そして、この議連の半導体政策は、あまりにも荒唐無稽である(拙著記事を参照ください→『何を今さらのお粗末さ、日本の半導体政策が大コケ必至の理由』、2021年6月8日/JBPRESSのサイトに移行します)。

 さらに筆者は6月1日、衆議院の「科学技術・イノベーション推進特別委員会」に、半導体の専門家として参考人招致され、15分の意見陳述を行った(その様子がYouTubeにアップされています)。

 そのテーマを簡単に言うと、「日本半導体産業の過去を振り返り、反省・分析し、未来の政策を考える」というもので、筆者を含めて3人の参考人が意見陳述を行い、9:00〜12:30の3時間半にわたって、質疑や討論を行った。

 加えて、経済産業省の主導で、TSMCを誘致し、つくばに後工程の研究拠点をつくるという報道がある(日経新聞6月16日)。また、CMOSイメージセンサーで売上高シェア世界一のソニーとTSMCが合弁会社を設立し、九州に1兆円規模の新工場を建設すると報じられている(日経新聞5月28日)。ここにも、経産省が関係している模様である。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る