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米政府、半導体のR&Dに520億ドル投入へ上院で法案が可決

2021年6月8日(米国時間)、米国上院が520億米ドルを国内の半導体研究/製造に割り当てるという画期的な法案を可決した。それにより、米国による半導体製造の“国内回帰”の取り組みへの焦点は下院へと移った。

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 2021年6月8日(米国時間)、米国上院が520億米ドルを国内の半導体研究/製造に割り当てるという画期的な法案を可決した。それにより、米国による半導体製造の“国内回帰”の取り組みへの焦点は下院へと移った。

 この、上院が提案した包括的な法案「U.S. Innovation and Competition Act」は、賛成68、反対32で採決された。2020年に提出された法案「CHIPS for America Act」と2021年度の国防予算案の規定に資金を供給する内容だ。ICサプライチェーンの混乱とその結果生じた半導体不足がもたらした緊迫感を踏まえて、上院の「緊急の追加予算割当額」には、商務省による半導体関連のイニシアチブに5年にわたり割り当てられる予定の495億米ドルが含まれている。


画像はイメージです

 最大の資金が割り当てられるのは、高度なパッケージングなどの領域での半導体研究開発を促進するための産業インセンティブプログラムである。短期的な半導体不足を食い止めるための取り組みとして、大きな打撃を受けた自動車分野と国家安全アプリケーション向けの「レガシーチップの製造」にも20億米ドルが割り当てられる。

 この緊急の資金供給には、「National Semiconductor Technology Center(国立半導体技術センター)」と「National Advanced Packaging Manufacturing Program(国による高度パッケージング製造プログラム)」を設立するための“前払い的な”割り当てとしての105億米ドルも含まれる。これらの資金は今後5年にわたり割り当てられる予定だ。

 今回上院で可決された法案には、Open RANなど、米国による5G(第5世代移動通信)関連のイニシアチブを支援するための資金供給も含まれている。法案には「Open RANは米国と通信キャリアからだけでなく、あらゆる規模の米国のベンダーに加え、幅広い非伝統的なベンダーや技術企業からも支持を得ている」と記されている。

 提案されている「USA Telecom Act」の一部として、上院の割当額には「Public Wireless Supply Innovation Fund(公共無線供給イノベーションファンド)」向けの15億米ドルが含まれている。その目的として、特にHuaweiやZTEといった中国の通信機器プロバイダーに匹敵する“躍進的な”代替技術を実現するような、ソフトウェア定義のオープンな無線技術のイノベーションを促進することが挙げられる。

 CHIPS for America Actで定められた資金供給には、半導体サプライチェーンを強化しつつ、通信技術の安全性も高められるよう考案された電気通信法の規定を支援するための5億米ドルも含まれている。

 上院議員のMark Warner氏(バージニア州選出)はCHIPS for America Actに加え、通信法の5G無連に関する規定についても早期から積極的に支援してきた(政界に入る前は無線業界の起業家だった人物である)。

 Warner氏は上院での可決をたたえる声明の中で、「半導体分野における米国のイノベーションは、イノベーション主導の経済全体を補強する。だが、米国はあまりにも長い間、中国のような競合国が米国より多くの資金を投じる状況に甘んじてきた。そのようなことをこれ以上許してはならない。この法案によって、国内の半導体製造に520億米ドルもの大規模な資金が投じられる。それにより、米国内に高賃金の雇用が創出される他、米国の世界的なイノベーション力が維持されることになる」と述べた。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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