ギャップ長20nmのナノギャップガスセンサーを開発:応答速度は従来品に比べ約300倍
東京工業大学は、抵抗変化型ガスセンサーの電極間隔(ギャップ長)を20nmと狭くしたナノギャップガスセンサーを開発した。ギャップ長が12μmの一般的な酸素ガスセンサーに比べ、約300倍の応答速度を実現した。
ギャップ長が35nm以下で応答速度は格段に高速化
東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所の真島豊教授とPhan Trong Tue助教(研究当時)の研究グループは2021年6月、抵抗変化型ガスセンサーの電極間隔(ギャップ長)を20nmと狭くしたナノギャップガスセンサーを開発したと発表した。ギャップ長が12μmの一般的な酸素ガスセンサーに比べ、約300倍の応答速度を実現した。
ガスセンサーは大気中に存在するさまざまな種類のガス濃度を検出するデバイスである。ガスの種類や濃度を検出する方法の1つとして抵抗変化型ガスセンサーがある。ガス濃度に応じて、ガス検出用材料の抵抗が変化する現象を利用して測定する。
一般的な抵抗変化型ガスセンサーは、対向する一対の電極でガス検出材料を挟む構造となっている。ただ、電極間隔を0.1μm以下に狭くするという検討は、これまで行われていなかったという。
真島教授らは既に、電子線リソグラフィにより、ギャップ長が20nm以下の白金ナノギャップ電極を作製する技術を確立している。今回の実験では2種類のナノギャップガスセンサーを用意した。ボトムコンタクト型とトップコンタクト型である。このうち、トップコンタクト型ナノギャップガスセンサーは、まず溶液プロセス技術でガス検出材料となる酸化セリウム膜を形成し、その後に白金ナノギャップ電極を作製したという。
作製したナノギャップガスセンサーの構造図。左がボトムコンタクト型、中央はトップコンタクト型、右はギャップ長を20nmとしたトップコンタクト型ナノギャップガスセンサーの顕微鏡写真 (クリックで拡大) 出典:東京工業大学
作製したガスセンサーを用い、酸素ガスを導入した時の抵抗変化について、その応答速度を測定した。この結果、ギャップ長が20nmのトップコンタクト型ナノギャップガスセンサーの応答速度は10秒であった。これに対し、ギャップ長が12μmの一般的なガスセンサーは3200秒となった。ギャップ長を20nmとしたことで、応答速度は約300倍に達することが実証された。
高速応答とギャップ長の依存性も調べた。その結果、ギャップ長が35nm以下になると、応答速度は格段に速くなることが分かった。ボトムコンタクト型ナノギャップガスセンサーでも、トップコンタクト型と同等の応答速度が得られたという。
今回の実験では、酸素ガスの検出に適した酸化セリウムを材料に用いたが、開発したナノギャップガスセンサー技術は、それ以外のガス検出材料を用いたガスセンサーでも、高速・高機能化することが可能だという。
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