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量子センサーのスピン情報、電気的読み出しに成功高感度の集積量子センサー実現へ

東京工業大学と産業技術総合研究所(産総研)の共同研究グループは、ダイヤモンド量子センサーのスピン情報を、電気的に読み出すことに成功した。感度が高い集積固体量子センサーの実現が期待される。

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横型ダイヤモンドp-i-nダイオードを新たに開発

 東京工業大学と産業技術総合研究所(産総研)の共同研究グループは2021年6月、ダイヤモンド量子センサーのスピン情報を、電気的に読み出すことに成功したと発表した。感度が高い集積固体量子センサーの実現が期待される。

 ダイヤモンド中のNV(窒素−空孔)センターは、微弱な磁場を検出できる量子センサーとして機能する。NVセンターのスピン状態を読み出すため、これまでは「金属−ダイヤモンド(絶縁体)−金属」というMIM構造を用いて電気的検出に取り組んできた。ただ、この構造では高い感度と小型化を両立させることが難しかったという。

 研究グループは今回、横型ダイヤモンドp-i-nダイオードを開発した。これは、i層の上に化学気相合成法を用いて、高濃度の不純物を添加したp層とn層をパターン形成した構造となっている。NVセンターは、窒素イオン注入を行いi層中に形成した。

 今回の実験により、ダイヤモンドp-i-nダイオードにレーザーを照射することで、p層近傍のNVセンターから発生した光キャリアを計測できることが分かった。これは、ドーピングが異なるダイヤモンドの接合部に発生する内蔵電位により、外部電圧を加えなくても光キャリアを効率的に取り出せることを実証したものだという。

 実験では、0〜10mWの光を照射し、そのパワーに応じた光電流が得られることを確認した。マイクロ波を印加しながらNVセンターからのスピン情報を電気的に検出するPDMR測定にも成功した。これによって、量子センサーとして機能することを実証した。


左は開発した横型ダイヤモンドp-i-nダイオードの構造図、中央は電気的に検出したNVセンターからの光電流、右はPDMRスペクトル (クリックで拡大) 出典:東京工業大学、産総研

 さらに今回は、光照射の位置を変えて電気的信号の距離依存性を測定。NVセンターから発生する光キャリアの拡散長の測定にも初めて成功した。

 今回の研究成果は、東京工業大学工学院電気電子系の岩﨑孝之准教授と波多野睦子教授、産業技術総合研究所(産総研)先進パワーエレクトロニクス研究センター新機能デバイスチームの加藤宙光主任研究員と牧野俊晴研究チーム長ら、共同研究グループによるものである。

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