自動運転車の安全規格標準化へ、業界超えたWG設立:ArmやNXP、Audi、VWなどが参画
自動運転車のアーキテクチャと標準化の促進に注力する欧州のイニシアチブは、切実に求められている安全性の検討に重点的に取り組んでいる。
自動運転車のアーキテクチャと標準化の促進に注力する欧州のイニシアチブは、切実に求められている安全性の検討に重点的に取り組んでいる。
この取り組みでは、大手自動車メーカーのAudiとVolkswagen Group、ArmとNXP Semiconductors、「The Autonomous」という統括組織を立ち上げたTTTech Autoなどの企業が業界を超えて連携している。同イニシアチブのステークホルダーは、「安全性の標準化と連続生産の基盤の確立を目指す」と述べている。
The Autonomous内に設立されたこの「Safety & Architecture(安全およびアーキテクチャ)」ワーキンググループはまず、アクチュエーターやセンサーに接続するサブシステムと、自動運転車の運転の安全性を改善するために設計された「故障封じ込めユニット(fault-containment unit)」に焦点を当てるという。このアプローチは、単一障害点の回避を目的とするものである。例えば、アナログ回路が故障すると、その故障によって車載システム全体の電流が増加し、高くなった電流に耐えられない他の部品が損傷を受ける可能性がある。同グループは、「故障封じ込めの狙いは、単一障害点に付随して起こる損傷を回避または最小限に抑えることである」と説明している。
同ワーキンググループが提案した自動運転車アーキテクチャは、まずグループメンバーのためのテンプレートとして利用するが、最終的には業界標準として安全な車載アーキテクチャを確立することを目指している。
ワーキンググループは、イニシアチブのスケジュールに従って、「標準化団体との継続的な連携」にも注力するとしている。
The Autonomousのチェアマンを務めるRicky Hudi氏は、「真の自動運転の開発は、自動車メーカーとTier1サプライヤー、技術および研究企業の連携した取り組みによってより良いものとして実現できる。そのため、国境を越えて安全な技術を開発するには、競争に至る前の基礎研究段階の環境が必要となる。この取り組みによって、ベストプラクティスや業界を超えた標準など、持続可能な顧客の信頼基盤を構築したい」と述べている。
開発コストは上昇し続けており、欧州の自動車メーカーはこれまでのところ、自動運転車の技術に特化した研究開発費でアジアや米国のライバル企業を上回っている。英国の経営コンサルタントであるPricewaterhouseCoopers(PwC)による最近の業界調査によると、欧州の自動運転車開発企業の研究費は2011年から2019年の間に75%増加し、420億ユーロ(約5兆4800億円)に達したという。米国やアジアの研究開発費は大きく後れを取っている。
自動車の安全性に関する規格は複数ある。そのうちの1つが、BMWが推進している「PD ISO/TR 4804:2020」だ。この仕様は承認されており、2021年夏に公開される予定である。
また、AudiとBMW、その他9社の業界リーダー(AptivとBaidu、Continental、Daimler、Fiat Chrysler Automobiles、HERE、Infineon Technologies、Intel、Volkswagen)は、「SaFAD(Safety First for Automated Driving)」というホワイトペーパーを発表している。
他にもBASELabs、CoreAVI、DENSO、自動運転スタートアップのFive(旧FiveAI)、Fraunhofer IESE、スウェーデン王立工科大学などがこのイニシアチブのメンバーとして名を連ねている。
同グループは、自動運転車アーキテクチャ構築とともに、AI(人工知能)、サイバーセキュリティ、センサーフュージョンの応用、製造物責任を含む法規制の問題にも焦点を当てる。同グループは、2022年が「標準化の年」、2023年が「エコシステムパートナー間の協力体制が強化される年」になる、と予測している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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