FoxconnがMacronixの生産設備を買収、半導体生産に参入へ:EV進出計画の一環で
Appleの「iPhone」などの民生機器の世界最大の組み立てメーカーであるFoxconn Technology Group(以下、Foxconn)は、電気自動車(EV)への進出計画の一環として、半導体生産に参入する。
Apple「iPhone」など民生機器の大手組み立てメーカーであるFoxconn Technology Group(以下、Foxconn)は、電気自動車(EV)への進出計画の一環として、半導体生産に参入する。
Foxconnは最近、台湾を拠点とするMacronix International(以下、Macronix)の6インチシリコンウエハー工場と設備を25.2億台湾ドル(約99億円)で買収すると発表した。
この買収は、Foxconnにとって半導体生産の第一歩となる。同社は、EVや医療用電子機器など高成長製品の生産を強化する計画の一環として、同工場を利用するという。FoxconnのEVアライアンス「MIH」には、これまでにハードウェアおよびソフトウェアを提供する1200社以上のパートナー企業が参加している。パートナー企業は、2021年10月にEVキットを、2022年に電気バスのプロトタイプを共同で発売する予定だという。
MIHアライアンスのもう1つの目的は、「Android」のような、EV向けオープンプラットフォームを構築することだ。
Foxconnのチェアマンを務めるYoung Liu氏によると、同社はMacronixの工場を利用して、半導体、特にEVに使用されるパワーコンポーネントの開発と生産を行うという。同氏は、「台湾の新竹サイエンスパーク(Hsinchu Science Park)にある同施設は、Foxconnの半導体事業グループの拠点になる」と付け加えた。
同社がEV事業への進出を図っているのは、主力のスマートフォン事業の成長が鈍化しているためだ。これによって、EVではTeslaや中国のNIOに後れを取っている、Appleなどの既存顧客との関係を強化したい考えだ。
Foxconnは、独自の車載半導体を製造することで、世界的な半導体不足のために生産ラインの休止を余儀なくされている自動車メーカーに対する競争上の優位性を獲得したい考え。また、半導体を自社供給することで、在庫管理がしやすくなり、生産コストを削減することもできる。
同社は、主要な自動車メーカーともパートナーシップを結んでいる。Fiat ChryslerはFoxconnとの合弁事業を立ち上げて、中国でEVの製造とコネクテッドカーを開発する計画だという。
Foxconnと中国の自動車メーカーであるZhejiang Geely Holding Groupは2021年1月に、他の自動車メーカーの受託生産に協力すると発表している。同社はVolvoを傘下に置くほか、Daimlerの株式の9.7%を保有している。
Foxconnは、米国の自動車メーカーであるFiskerとも提携している。両社は、2023年第4四半期までにEVの生産を開始する計画だという。FiskerはFoxconnとの協業によって、プラグインハイブリッドカー「Karma」での失敗を乗り越えてEV事業における存在感を回復できるかもしれない。
FoxconnにとってEV事業への進出は、AppleやDellのノートPC製造と同じように、エレクトロニクスブランド向けに低コストのモジュールを開発する新たな機会となる。今回の違いは、Foxconnがシャープの買収によって獲得した高度なディスプレイ技術によって、パートナーにさらなる付加価値の提供を目指していることだ。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- EV組み立てで新たなチャンスを狙うFoxconn
台湾Foxconnが2021年3月に、電気自動車(EV)アライアンス「MIH Alliance」の設立を発表した。関係者たちによると、同社はこの同盟によって、EV市場への参入を検討しているメーカーとの間でパートナーシップを構築していきたい考えだとしており、そのターゲットはAppleに他ならないという。 - 自動車業界の“ファブレス化”は進むのか
今日、自社でチップを設計しているが製造していない半導体企業に疑問を呈する人はいないだろう。自動車を設計するが製造はしない自動車メーカーとの違いは何だろうか。違いはないはずだ。今後は、自動車メーカーも“ファブレス化”が進むと予想される。 - 米中サプライチェーンの分断が深刻化
台湾Foxconnは2020年8月、米中間で貿易戦争が激化している影響を受け、現在中国に置いている生産拠点を海外に移転する予定であることを明らかにした。 - エッジ向けAI映像解析ソリューションを提供
Foxconnとソシオネクスト、Hailoの3社は、それぞれが得意とする技術を用い、高い電力効率を実現したエッジ向け次世代AI映像解析ソリューションの提供を始める。 - 中国勢の台頭と有機ELの行方、ディスプレイ業界の未来
EE Times Japanでは、ディスプレイ業界の現状を振り返り将来を見通すべく、市場調査会社IHS Markitのアナリストにインタビューを行い、複数回にわたってその内容をお届けしている。第1回は、ディスプレイ産業領域を包括的に担当する同社シニアディレクターのDavid Hsieh氏より、大型/中小型液晶と有機ELの現状と未来を聞く。 - 小さな国の賢い戦略、台湾の成功を行政トップに聞く
TSMC、MediaTek、Foxconn――。小さな国ながら、エレクトロニクス業界では多くの優良企業を抱える台湾は、いかにしてエレクトロニクス産業を成長させ、生き抜いているのだろうか。