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10nm以下の極短チャンネルを目指す2次元(2D)材料のトランジスタ福田昭のデバイス通信(317) imecが語る3nm以降のCMOS技術(20)(1/2 ページ)

今回は、2次元材料の特長と、集積回路の実現に向けた課題について紹介する。

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3次元材料(通常の材料)と2次元材料の違い

 半導体のデバイス技術とプロセス技術に関する世界最大の国際学会「IEDM(International Electron Devices Meeting)」は、「チュートリアル(Tutorials)」と呼ぶ技術講座を本会議(技術講演会)とは別に、プレイベントとして開催してきた。2020年12月に開催されたIEDM(Covid-19の世界的な流行によってバーチャルイベントとして開催)、通称「IEDM2020」では、合計で6本のチュートリアル講演が実施された。その中で「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials(CMOSを3nm以下に微細化する要素技術-デバイスアーキテクチャと寄生素子、材料)」が非常に興味深かった。講演者は研究開発機関のimecでTechnology Solutions and Enablement担当バイスプレジデントをつとめるMyung‐Hee Na氏である。

 そこで本講座の概要を本コラムの第298回から、シリーズでお届けしている。なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。


チュートリアル講演「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials(CMOSを3nm以下に微細化する要素技術-デバイスアーキテクチャと寄生素子、材料)」のアウトライン。講演スライド全体から筆者が作成したもの。前回から、「さらにその先を担うトランジスタ技術(ポストシリコン材料)」の講演パートを紹介している(クリックで拡大)

 前回から、4番目のパートである「さらにその先を担うトランジスタ技術(ポストシリコン材料)」の講演部分を簡単に記述している。前回はポストシリコン材料の有力候補が2次元(2D)材料であることと、トランジスタに応用したときの可能性を論じた。今回は、2次元(2D)材料の特長と課題に関する講演部分を紹介する。

 始めは前回で説明不足だった「2次元(2D)材料とは何か」について簡単に補足しよう。シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)などの半導体結晶は「3次元材料」とも呼べる。結晶は3次元構造を形成する。原子が3次元方向に連なり、原子同士が3次元方向に強く結合する。キャリアは3次元のどの方向にも流れる。

 これに対して2次元(2D)材料は、原子が横方向(水平方向)には強く結合しているものの、縦方向(垂直方向)には弱い結合が原子層ごとに存在する。その結果、結晶としては層状の構造となる。単原子層の厚みは1nm程度と非常に短い。

 2次元材料の各原子層は、ファンデルワールス力で弱く結合している。このため、いわゆる「へき開」によって層状の材料として取り出せる。代表的な2次元材料は黒鉛(グラファイト)で、へき開によって層状材料のグラフェンを作成できる。


代表的な2次元(2D)材料「二流化モリブデン(MoS2)」の結晶構造。層状の結晶格子が垂直方向に弱く結合している。出典:imec(IEDM2020のチュートリアル講演「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials」の配布資料) (クリックで拡大)

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