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IoV(車のインターネット)実現への道はシリコンで敷き詰められている変わる自動車のコアコンピタンス(2/2 ページ)

自動車メーカーのコアコンピテンスはエンジンやシャーシの機械的設計から、ソフトウェアとシリコンに移行しつつあります。IoVへの道はシリコンで敷き詰められているのです。

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データが王様

 Teslaの株価が過大評価されているのかどうかを判断するのは難しいですが、自動車製造におけるエレクトロニクス最優先のアプローチを同社が例示したことに議論の余地はありません。Teslaの時価総額がシリコンバレーのテック企業並みであることは偶然でも何でもありません。多くのコンシューマエレクトロニクス企業に倣い、Teslaは自社の車に使用するチップの多くを設計し、そのソフトウェアを開発しています。Teslaのコアコンピテンスは板金ではなくエレクトロニクスにあるのです。同社はデータセンターにあるサーバーも自社で管理しています。Teslaの車は常にインターネットと自社サーバに接続されており、地図、エンタテイメント、交通情報、あるいは車載センサやソフトウェアアップデートによって収集される視覚データなどの形で膨大な量のデータが双方向に流れています。このデータは同社にとっては金の卵であり、IoVを実現しようとしている他の企業――つまり、すべての企業――もいずれは同じようなシステムを構築しなければならないでしょう。

 Mobileyeもまた、最先端のソフトウェア、SoCシリコン、マシンラーニング技術に基づいて自社のテクノロジーを絶えず向上させるべく顧客からのデータを利用している企業の一つです。当然ながら、自動車メーカーはすべてをゼロから作っているわけではなく、信頼の置けるサプライヤー、OEMネットワーク――Bosch、Continental、デンソー、ZF、Magna、その他多数――に主要サブシステムの設計/製造を任せています。その主たるものは自動変速機やエアコンなどの電気機械的な装置です。今後、これらの大手サプライヤーが自動車メーカーに高価値のサブシステムを供給し続けるには、自社でSoC設計/ソフトウェア開発チームを持つ必要があるでしょう。そうしなければ、エレクトロニクスの分野でより経験豊富な企業に仕事を奪われる可能性が大です。多くのカスタムSoC開発には、SoCの作り方を熟知している伝統的な半導体設計企業、自動車OEM、アプリケーション知識を持つティア1サプライヤーの三者間の連携が欠かせないでしょう。

 IoVが成熟するまでにはまだ長い時間がかかるでしょうが、それはすでに出現し、電気でも水素でもガソリンでもなく、データを燃料として動き始めています。データがユーザーエクスペリエンスを継続的に向上、進化させるようになれば、消費者はその革命に喜んでお金を払うでしょう。自動車メーカーのコアコンピテンスはエンジンやシャーシの機械的設計から、ソフトウェアとシリコンに移行しつつあります。IoVへの道はシリコンで敷き詰められているのです。

筆者プロフィール

K. Charles Janac/Arteris IP会長、社長兼CEO

 Janac氏はArteris IPの社長兼CEOとして、NoCテクノロジーというコンセプトを広めたパイオニア的存在である同社の成長と世界的地位の確立に責任を負っています。同氏はその20年以上にわたるキャリアにおいて、EDA、半導体資本設備、ナノテクノロジー、工業用高分子材料、ベンチャーキャピタルをはじめとする様々な業界で活躍してきました。

 キャリアの当初10年間、Janac氏はCadence Design Systems(NYSE: CDN)のマーケティング・営業部門でいくつかの役職に就き、同社を世界有数のソフトウェア企業10社のうちの一つに押し上げることに貢献しました。その後はHLD Systemsに社長として加わり、同社の主軸をコンサルティングサービスからICフロアプランニングソフトウェアに移し、管理、流通、カスタマーサポートの各組織を構築しました。続いて、半導体オートメーション設備の製造業者Smart Machinesを設立し、後にBrooks Automation(NASDAQ: BRKS)に売却しました。そしてアーリーステージ専門の大手ベンチャーキャピタルInfinity Capitalで客員起業家として1年間を過ごした後、Janac氏はNanomix社の社長兼CEOに就任し、この創設間もないナノテクノロジー企業の発展に尽力しました。Janac氏はタフツ大学において有機化学の学士号と修士号を、スタンフォード大学経営大学院で修士号をそれぞれ取得しています。


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