市場急拡大の反動、「メモリ大不況」はいつやってくる?:湯之上隆のナノフォーカス(42)(3/6 ページ)
続々と巨額の投資が発表される半導体業界。現状は半導体不足が続いているが、どこかで供給が需要を追い越し、そのあとには半導体価格の大暴落と、それに続く半導体の大不況が待ち構えているとしか考えられない
DRAMのSpot価格の推移
ここまでの分析で、2020年Q4〜2021年Q2 にかけて、メモリ市場が急拡大している要因として、DRAMの出荷個数の増大が関係していることが分かった。では、DRAM価格はどの程度関係しているのだろうか? 以下では、DRAMのSpot価格とContract(大口取引)価格の2種類について、その挙動を分析してみよう(なお、この分析は以前報告したこちらの記事の続報にあたる)。
まず、図6に、2020年12月31日〜2021年9月17日までの各種DRAMのSpot価格を示す。ここで、DDRとは、Double Data Rateの略で表されるDRAMの規格で、DDR3はDDR2の2倍の転送レート、DDR4はDDR3の2倍の転送レートになる。
図6からは、DDR3よりDDR4のDRAMの方が価格が高く、また同じDDRA4なら16G、8G、4Gの順で価格が高いことが分かる。DDR3でも、集積度が高い方の価格が高い傾向は同じである。
次に、2020年12月31日のDRAM価格を「1」に規格化して、各種DRAM価格の推移を見てみた(図7)。すると、2021年3〜4月にかけて、DDR3_2Gbの2種類のDRAM価格が2.4〜2.5倍以上に高騰している。その次に高騰しているのはDDR3_4Gの2種類で1.9〜2倍以上、続いてDDR4_4Gの2種類が1.8〜1.9倍に高騰している。
その一方で、最も集積度の高い16Gは3月頃に1.2倍程度、その次のDDR4_8Gの2種類は1.4〜1.5倍程度の高騰にとどまっている。要するに、DRAMのSpot価格では、転送レートが低く、集積度も高くないレガシーなDRAM価格が高騰していると言える。この傾向は、DRAMのContract価格の推移でも見て取れる。
DRAMのContract(大口取引)価格の推移
図8に、2020年9月〜2021年8月までの各種DRAMのContract価格の推移を示す。Spot価格と同様に、DDR2、DDR3、DDR4の順で価格は高くなり、同じDDRなら集積度が高い方が価格が高い。
次に、2020年12月のContract価格を「1」で規格化して、各種DRAM価格の推移を見てみた(図9)。すると、価格高騰の大きい順から、DDR3_2G、DDR2_512M、DDR2_1G、DDR3_1Gの順であることが分かった。一方、最も高集積なDRAMであるDDR4_8Gの2種類は、価格高騰の度合いが最も低かった。
つまり、Spot価格でもContract価格でも、レガシーなDRAM価格が高騰している一方、集積度の高いDRAM価格はそれほど上昇していないことが明らかになった。なぜ、このようなことが起きるのだろうか?
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