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STEMを取り入れた「夏休みの自由研究」型パッケージ教育のすすめ踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(15)STEM教育(3)(6/8 ページ)

今回は、STEMを取り入れた新しい教育を提案します。併せて、プログラミング教育×STEM教育の方程式から導き出せる、「理系日本人補完計画」という壮大な妄想(?)を語ってみます。

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学校教育で教えるデジタルツインは「ダイエット」だっていい

 しかし、学校教育におけるSTEMで使うデジタルツインは、もっと単純な題材で良いのです。私がお勧めするパッケージの一例は、「ダイエット・デジタルツイン」です(関連記事:「万年ダイエッターにささげる、“停滞期の正体”」)。

 で、このデジタルツインの概要はこんな感じです。

 これだけのもので、プログラムのステップ数は、20行もありません。非常に簡単です。こちらに、「【付録】超シンプル体重変動シミュレータ(C言語版)」がありますので、ご参照ください。

 なぜ、これが「デジタルツイン」であるかというと、私は、現実の自分の体(の体重)と、コンピュータの中の仮想空間に作った自分(の体重)を比較しているからです。

 結果として、私のダイエット仮説「痩せたければ、食べない」を検証できましたし、「きちんと制御さえすれば、自分の体重を狙いの数値にドンピシャに持っていける」という確証を得ることもできました。

 つまり、一切の特殊な装置や手続もなく、コンピュータ(パソコン)とエネルギー保存法則をベースとしたプログラミングだけで、STEM型教育を行い得るという、という一つの証明になっていると思います。

 個人的所感としては、「ティーンエイジャの女子であれば、真剣に、『我が事』として、微分方程式のプログラミングと、エネルギー保存法則の勉強にとりかかりそう」な気がしています。

 つまり「理系科目が嫌い」であっても、それを別の問題(課題)にすりかえて、そのアプローチとして、特別な高価な装置を使わずに、仮説を次々と試すことができるプログラミングは、その教育にかかるコスト(時間、人材、金)が、飛び抜けて安いのです。

文科省の“壮大な計画”(?)

 このように、「STEM教育」 × 「プログラミング教育」のアプローチ、そして、「将来の社会問題解決への人材育成」という、文部科学省「理系日本人補完計画」の端緒が垣間見えてくるのです。

 ―― おそるべし、文部科学省。このような壮大な計画(2つの教育メソッドを組み合せる)を、国民に隠蔽しながら進めていたとは……。

 『あの分かりにくい、政府資料の数々は、このためだったのか』と、ようやく私は腹に落ちました。

 そして、STEM教育とか、プログラミング教育に関わっている関係者の何人かも、この実体を知りつつ、"STEM"だの"STEAM"だのという、どーでもいい「言葉遊び」の論文を量産していた理由も、分かってきました。

 うん、分かるぞ ―― 分かる。

 このような、「理系日本人補完計画」が露呈すれば、間違いなく、"USB"がなんのことか知らないような議員を大臣に推す(著者のブログ)ような、絶望的なITリテラシー集団である我が国の与党が、文部科学省のこの計画をつぶしにかかるのは目に見えています。

 急速にすすむIT化を、なんとか妨害し続けて、町内会の顔で居続けようとするジジイやババアたちの、チンケな自尊心*)も、このような、「問題解決型人材の育成」の阻止に向くでしょう。人口の3割を占める65歳以上の人々も、そちら側につく可能性もあります。

*)関連記事:「デジタル時代の敬老精神 〜シニア活用の心構えとは

 なぜ、私はそう思うのか ―― 『10年後の私なら「そう思う」と確信できるから』です。

 社会の問題解決の速度に追い付くことなく、年下の若いやつらの言葉に従わされるだけの日々の情けなさは、想像するだけでも恐ろしいです。それは、重度の認知症になってしまって、全ての世界から隔離されるような、恐怖だと思います*)

*)関連記事:「見張れ! ラズパイ 〜実家の親を熱中症から救え

 ですが、そのような状況を看過しておいた結果が、『日本のデジタル競争力27位*)』という体たらくです ―― 「技術大国日本? 何、それ、おいしいの?」 という感じです。

*)参考:IMD WORLDCOMPETITIVENESS ONLINE

 PCが使えない政治家、遠隔授業のできない教師、リモート会議システム設定すらできない会社の社長、そして、メールを使えない町内会会長 ―― もう、あなたたちに「優しい顔」をする時期は、遠(とう)に過ぎました。

 これからは、『ティーンエージャーにすがりついてでも、死にもの狂いで、世界に追い付いてこい』 ―― そして、『何人(なんぴと)も、文部科学省の「STEM教育」 × 「プログラミング教育」の計画を邪魔をするんじゃねえ』と申し上げておきます。

 もっとも、それは、「今回の、私(江端)の壮大な妄想、『理系日本人補完計画』が正解だったら」という条件付きにはなりますが。



 では、今回の内容をまとめます。

【1】冒頭にて、「夏休みの自由研究」に対する、子どもと保護者の意識から、日本人の根深い「理系嫌い」についての所感を語ってみました。

【2】文部科学省の「プログラミング教育」における「プログラミング的思考」について、(私の頭で)理解可能な資料を見つけられませんでした。そこで、令和7年度(4年後)大学入学共通テストからの出題教科・科目「情報」のサンプル問題を、実際に問いてみて、その意義を推測してみました。

【3】その結果、「目の前にある喫緊(きっきん)の問題を ―― 完全じゃなくてもいいから ―― 今、この時点で、手に入っているモノ(データとコンピュータ(パソコン))だけで、可能な限りアプローチしてみろ」という世界観が見えてきました。

【4】私(江端)は、STEM教育を科学・技術・工学・数学」という必要な食材を、大鍋に入れて、ごった煮として取り扱う方法(メソッド)を学ぶ教育」 ―― さらに縮めて「ごった煮型理系教育」と定義しました。その上で、「日本人の理系嫌い」のために、「STEM教育は、それを開始する前から既に頓挫している」のではないかと考えました。

【5】この考え方をひっくり返すために、STEMを使った「課題解決型の教育方式」への転換を提案しました。

 しかし、そもそも、社会課題って、そもそも"STEM"で解決できるものなの? という疑問に対しては、私が執筆してきたコラムの内容分析から、その可能性があることを示しました。

【6】今回の「プログラミング教育」と「STEM教育」の相乗効果を得る方法として、シミュレーション(デジタルツイン)によるアプローチを提言しました。その実例として、「ダイエット・デジタルツイン」の具体例を示し、恐らく、「ティーンの女子にウケるに違いない」という江端の私感を交えて、論を展開しました。


 以上です。

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