量子コンピュータ市場、2030年度は2940億円規模へ:矢野経済研究所が国内市場を調査
矢野経済研究所は、国内の量子コンピュータ市場(サービス提供事業者売上高ベース)を調査し、2030年までの市場予測を発表した。2021年度見込みの139億4000万円に対し、2030年度は2940億円規模に達する見通しである。
化学や金融などで実証実験が増加、今後は対象領域も拡大
矢野経済研究所は2021年10月、国内の量子コンピュータ市場(サービス提供事業者売上高ベース)を調査し、2030年までの市場予測を発表した。これによると、2021年度見込みの139億4000万円に対し、2030年度は2940億円規模に達する見通しである。
国内量子コンピュータは、化学や金融(資産運用やリスク管理)、EC(電子商取引)、広告(レコメンド)、物流、学術用途などの分野で、実証実験が行われている。その対象は、組み合わせ最適化問題や探索工程の高速化など、従来のスパコンでは極めて計算が難しい領域である。
矢野経済研究所は、今後市場が拡大する前提条件として3点を挙げた。ソフトウェア開発キットの提供など「ハードウェアの進化や開発環境の整備」、材料計算やシミュレーション、量子機械学習などを中心とした「ハードウェアの能力を引き出すアプリケーションの創出」および、「ユースケースの発掘」である。
今後の見通しは、2025年度に550億円、2026年度に800億円、2027年度に1122億円の市場規模と予測した。2024〜2025年度は、化学や金融などの一部業務で本格運用に向けた動きが出てくるという。それ以外の分野でも実証実験が増える見通しだ。
2026年度以降はダイナミックプライシングや、大規模な数値流体力学や空力特性、化合物の構造予測などで活用が本格化すると予測する。さらに、EC(電子商取引)分野ではレコメンドでの活用に加え、検索結果やサジェストの最適化などに用いられるとみている。2030年度になると、自動運転に向けた車両用バッテリーの開発や、医療分野での活用が本格的に始まると予測した。なお、今回の調査は2021年6〜9月に実施した。
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