ジェイテクト、ギ酸を活用した燃料電池を開発:機能実証機は定格出力50W級
ジェイテクトは、ギ酸を用いた定格出力50W級の燃料電池「J-DFAFC」を開発したと発表した。今後、定格出力が1kW級の燃料電池開発に取り組み、製品化を目指す。
電池サイズは9cm角、最大出力密度は290mW/cm2を達成
ジェイテクトは2021年11月、ギ酸を用いた定格出力50W級の燃料電池「J-DFAFC(JTEKT-Direct Formic Acid Fuel Cell)」を開発したと発表した。今後、定格出力が1kW級の燃料電池開発に取り組み、製品化を目指す。
ジェイテクトは2018年より、金沢大学の辻口准教授と共同で、直接ギ酸形燃料電池の研究に取り組んできた。ギ酸の分子構造は「HCOOH」で、水溶液は燃焼や爆発の可能性がなく安全性に優れており、環境循環性が高い。将来は、二酸化炭素と水の反応で合成されるギ酸の活用なども期待できるという。
J-DFAFCは、負極(アノード)に供給されたギ酸水溶液(HCOOH)が、触媒によって二酸化炭素(CO2)に分解され、水素イオン(H+)と電子(e−)を生成する。生成された電子は外部回路を通り、水素イオンは電解質膜を通り、カソード(正極)に達し、酸素と反応して水(H2O)を生成する。これらの化学反応によって電力が発生するという。
機能実証のために開発したJ-DFAFCは、金沢大学が独自開発したパラジウム触媒(Pd/C)技術と、ジェイテクトが開発、蓄積してきた材料・表面処理技術や解析技術、モノづくり技術を駆使することで、高い発電効率を実現した。機能実証機は、電池サイズが9cm角で、セルを複数枚積層した構造である。最大出力密度は290mW/cm2を達成した。
ジェイテクトは今後、出力密度の向上や電力安定化の技術を開発していく予定だ。照明や通信用電子機器などの電源をはじめ、非常用電源、遠隔地電源、さらには住宅や施設での小型分散電源といった用途に向ける。
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