経営層の再編が続くSMIC:事業は堅調も
上海に拠点を置くSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)は、事業が急成長している中、数人の取締役の辞職を発表した。
上海に拠点を置くSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)は、事業が急成長している中、数人の取締役の辞職を発表した。
SMICは自社Webサイト上に掲載した報道発表資料の中で、業界のベテランであるChiang Shang-Yi氏が2021年11月11日付でバイスチェアマンとエグゼクティブディレクターを辞職し、戦略委員会のメンバーからも離れたことを明らかにした。エグゼクティブディレクター兼共同CEOのLiang Mong Song氏も同日付でエグゼクティブディレクターの職を辞したという。その理由として、引き続きSMICでの役割を担うことに注力するためとしている。
Chiang氏が同職に任命されたのはたった11カ月前の2020年12月だった。同月、SMICは共同CEOのLiang氏が辞職する可能性を示唆していた。
Chiang氏とLiang氏はかつて、TSMCの上級社員だった。SMICは同業界で競合しているもののTSMCより規模が小さい。Chiang氏は2000年代初期にTSMCの研究開発(R&D)を統括していたが、その後、中国の半導体関連の新興企業を支援するため同社を退職した。
Chiang氏は2020年末、そのような新興企業の一つであったHSMC(Wuhan Hongxin Semiconductor Manufacturing Company)を、同社に現金がなくなったことを理由に退職した。世界的なパンデミックのさなか、HSMCが200億米ドルを投じた中国・湖北省武漢での半導体プロジェクトは、ウイルスのアウトブレイクと資金不足の犠牲になった。
Liang氏はTSMC時代にChiang氏の下でR&D担当のシニアディレクターを務めていた。その後2017年に共同CEOとしてSMICに入社している。Liang氏は以前、半導体技術をTSMCからSamsung Electronicsに不正に譲渡し、SamsungがTSMCとの差を縮めるのに寄与したとして有罪判決を受けたことがある。
SMICは、非常勤の取締役二人(Zhou Jie氏とYoung Kwang Leei氏)の退任も明らかにした。また、3人の取締役を新たに任命したという。
米国のトランプ前政権によって制裁が発動されたにもかかわらず、SMICの事業は成長している。中国政府が半導体開発に膨大な資金をつぎ込んでいることから、国内需要は堅調なままである。
SMICの前四半期の収益は過去最高に達し、前年同期比30.7%増を記録した。
SMICは自社Webサイトの中で「SMICは米国によるエンティティリスト(禁輸措置対象リスト)に含まれていることから、生産ならびに運営においてとてつもない困難に直面してきた」と述べた。
SMICによると、2021年以降の優先事項には「経営の連続性と継続的な能力拡大の確保、サプライチェーンの再調整、調達プロセスを最適化する方法の発見、サプライヤー認定の加速、生産計画と技術管理の強化」が含まれているという。
SMICは、「成熟した技術の拡大は期待通りに進んでおり、先端技術関連のビジネスは着実に改善している」としている。半導体不足に対応し、SMICは2021年第2四半期以降、「実際の需要」に基づいて割り当てを再定義しているという。
2022年は、半導体不足が長引くにもかかわらず、市場の拡大が続くとSMICは予想している。この予測は、エレクトロニクスのサプライチェーンの分断を生む可能性がある、米中のハイテク戦争を背景としている。
米政府は、7nm以下のプロセスノードでのチップ製造に不可欠なEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置の輸入をSMICに禁じている。Huaweiもエンティティリストに入っているので、Huaweiが7nm以下のチップを入手することは事実上、不可能となっている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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