SMIC、マネジメントチームを再編へ:HSMCの元CEOを幹部に任命
中国の上海を拠点とするファンドリーであるSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)は今週、トップマネジメントに関する2つの変更を発表した。
中国の上海を拠点とするファンドリーであるSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)は今週、トップマネジメントに関する2つの変更を発表した。
同社は2020年12月15日、業界のベテラン幹部であるShang-Yi Chiang氏をエグゼクティブディレクターとバイスチェアマン、戦略委員会のメンバーに任命したと発表した。さらに、その翌日に、SMICの共同CEO(最高経営責任者)兼エグゼクティブディレクターを務めるLiang Mong-song氏が辞任する可能性があることが明らかになった。
Chiang氏の任命は、同氏が、資金不足に陥った中国・武漢市の半導体ファウンドリーHSMC(Hongxin Semiconductor Manufacturing Corporation)のCEOを辞任してから約1カ月後のことである。Chiang氏とLiang氏はどちらも、TSMCの研究開発部門の元幹部だ。
米国は、5G(第5世代移動通信)やAI(人工知能)などの新しい産業セグメントで中国が優位に立つことを懸念し、中国のハイテク産業の成長を妨げるために規制を強化しているが、その対象にSMICを加えた。トランプ政権は、中国最大の半導体メーカーであるSMICが米国製の生産設備や設計ツールを軍事目的に使用する可能性があるとして、このリスクを容認できないと結論づけた。
SMICは香港証券取引所への声明で、「Chiang氏は、2020年12月15日に始まり2021年の年次総会後に終了する役務契約を締結した」と述べている。声明によると、Chiang 氏は20201年の年次総会後に再選の対象となるという。SMICは別の声明で、Liang氏の条件付き辞任の意向を認識していると述べている。
SMICの7nmプロセスの立ち上げ計画は、米国のエンティティリストに追加されたことで妨げられた可能性がある。SMICが現在適用している最新プロセスは14nmで、これは競合各社から数世代遅れている。
SMICは当初、5nmチップの生産を開始しているTSMCやSamsung Electronics(以下、Samsung)などとの差を縮めることを目指していた。
半導体は、技術の優位性をめぐる米中間の競争の要となっている。アジアの半導体メーカーは、米国の投資が減少する中で半導体の生産を拡大している。
近年、中国の半導体企業では、TSMCから最高幹部をヘッドハントする事例が見られるが、Chiang氏もその一人である。Samsungにプロセス技術をリークしたTSMCの研究開発部門の元シニアディレクターのLiang氏は、2017年に共同CEOとしてSMICに加わった。
Chiang氏とLiang氏はともに、TSMC在籍時代にR&Dに大いに貢献し、TSMCが最先端のプロセス技術を開発し、Appleという大口顧客を勝ち取ることにつなげた。Apple「iPhone」向けプロセッサは現在もTSMCが製造している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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