GIGAスクール構想だけでは足りない、「IT×OT×リーガルマインド」のすすめ:踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(16)STEM教育(4)(2/10 ページ)
今回は、全国の小中学生に1人1台のコンピュータと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組みである「GIGAスクール構想」と、その課題から、“江端流GIGAスクール構想”を提案してみました。
ネット議論の恐ろしさ
加えて、このセットメニューは、これからも、何時でも、どこでも、何度でも発生します ―― 絶対です。私たちは、ネットで発生した過去の事件から、何も学習しません。
一例として「ネット議論」を挙げてみましょう。ネット議論における過去の問題は、(過去の事例を省みられることなく)間違いなくGIGAスクール構想のIT教育プロセスでも発生します。断言できます。
上記は、ほんの一例ですが、「私たち人間は、ネットを使って、まともなコミュニケーションができるようにはてきていない」を実証する過去の実例であり、そして、これは、その場に参加して「痛み」を伴わなければ、絶対に理解できません。
「fj」については、掲示板というよりは、学術会議的な議論を目指したもの(とされていたようなので)で、非常に不寛容な空間で、私なんぞは、怖くてなかなか書き込みすることができませんでした。
- 「HPのアップのしかたが分かりません」と相談すれば、『HPって何ですか? ヒューレットパッカードをアップするとはどういう意味ですか?』と返され、
- 「レスをお待ち致します」とお願いすれば、『レスってなんですか。"フォローアップ"を期待れているのですか』と返され
- 「関係のない話を持ち込まないでください」と反論すれば、『ということにしたいのですね』と揚げ足を取られ、
―― うるせえ! 馬鹿野郎!!
と何度、ディスプレイの前で叫んだかしれません。
fjに接続できる組織(大学や企業)は、当時のネットワークスキルと計算能力のあるコンピュータ(ワークステーション)を持っていて、実際のメールアドレスを使った実名投稿が原則でした(名前や所属まで全部分かった)。基本的には、鼻持ちならないエリートたちのインテリ臭漂ういけすかない空間だったのは確かですが、だからこそ、発言者には、それなりの専門的な経験や知見、論理的な記述が要求されました。
しかし、議論している場を、勝手な判断だけで「不要」と決めつけて、その場を削除するメッセージ(コントロールメッセージ)を流し続ける人間もいて、建設的な議論よりも、ガバナンスが効かない世界における「人間の醜さ」を露呈する場に成り下がっていたと思います。
腹が立つことに、ネットで炎上撒き散らしていた"m"のメールアドレスで始まる奴が、日常生活では、常識人として振る舞っていることでした ―― なお、それはお前(江端)も同じだろう、というツッコミはなしの方向で。
一方、「2ちゃんねる」は、匿名による投稿だったので、その掲示板の内容は、fjとは比べものにならないほどひどいものでした。特にひどいのが「荒らし」で、これは、他人が不快に思うような書き込み・発言(=荒らし行為)をすること、または、そのような人を言います。ほとんどのスレッドで、「荒らし」が発生していました。
もっとも、これは、2ちゃんねるに限った話ではなく、1980年代のパソコン通信のころから存在しており、「荒らし」は、建設的で平和的な議論の場を、簡単に壊せることが分かっていました。一方、不適切な発言を削除する管理者が存在している場合には、このような問題を回避できることも分かっていました。
そのような経緯を経て、私たちは「同じ考え方をする人」だけで集って、ヌクヌクしたコミュニティでコミットして生きていければ、それでいいじゃないか、と考えるに至ります。
この極端なケースが、私の運営していたメーリングリストです。私は、その管理者になって、私が気にいらない意見を言う人を、無警告で一発で強制退会させるという『独裁者』をやっていました(この、『江端独裁帝国』は現在、存在していません(参考))。
このように、ネットコミュニティは、「エリートによる知性とロジックによる運用において失敗」し、さらに「匿名性と自由で公平な意見交換の場の運用において失敗」し、さらに悪い状態に転がり続けました。
そして「同じ考え方をする人だけで集まる場として運用」されるようになり、それ以外の人間を排除し続けることで、さらにその考え方を極端に先鋭化する装置として機能することになります。
世間一般に受け入れられない思想/趣味/性癖を持つ人たちのコミュニティが集まることは、悪いことではありません。彼ら、基本的にはマイノリティ(少数派)であり、それ故、彼らの人生にとって必要不可欠なコミュニティとなっているからです。
問題は、宗教や思想における原理主義の一部が、ネット空間の閉じたコミュニティを越えて、現実世界で、証拠の事実もロジックも無視した「かれらのだけの正義」―― "テロリズム"を完成してしまったことです。
イスラム原理主義のテロリスト集団のオルグ(勧誘活動)は、今やSNSで行うのが当たり前になってきていますし、移民問題を背景に台頭しているネオナチなども、閉じたグループの中で、過激思想が先鋭化して、テロによる要人殺害や、大量殺人計画(未遂)が明るみに出ています(「BS世界のドキュメンタリー 「ナチズムの再来 ドイツ 極右の実態」」(NHKオンデマンド))。
『バカはバカ同士で集まる』などと、私がのんきに批判や非難をしている間に、彼らは、私を殺害する準備を完了させてしまいました。私はその事実を認めざるを得ません。
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