6Gは2030年をメドに実用化、コロナで仕様策定に遅れも:Brooklyn 6G Summit
世界トップレベルの無線通信研究者が集まる「Brooklyn 6G Summit」が、2021年10月18〜19日に開催された。これにより6G(第6世代移動通信)市場は、大きな後押しを受けることになるだろう。この大規模サミットの開催によって、基本的な6Gインフラの準備がまだ整っていない状態でありながらも、新技術のハイプサイクルがかつてない早い段階で始動することになる。【修正あり】
【修正:2021年12月6日14時35分 当初、本記事のタイトルが「6Gは2023年をメドに実用化」でしたが、これは「2030年をメドに実用化」の誤りです。お詫びして修正致します。】
世界トップレベルの無線通信研究者が集まる「Brooklyn 6G Summit」が、2021年10月18〜19日に開催された。これにより6G(第6世代移動通信)市場は、大きな後押しを受けることになるだろう。この大規模サミットの開催によって、基本的な6Gインフラの準備がまだ整っていない状態でありながらも、新技術のハイプサイクルがかつてない早い段階で始動することになる。
NokiaのBell Labs Core Researchでプレジデントを務めるPeter Vetter氏は、今回のBrooklyn 6G Summitから新しく開催されることになったメディア向けラウンドテーブルで、「6Gの実用化には、この先まだ10年ほどかかる見込みだが、研究は既に本格化している。6Gのベースとなる未来の技術や、将来的に6G向けにどのようなアプリケーションを利用すべきかを判断するための研究が必要だ」と述べている。
6G実用化のタイミング
現在分かっているのは、6Gネットワークが今後、10年先の変わり目となる時期に登場するということだけだ。次世代セルラーは2030年ごろに、それ以前の3Gや4G、5Gと同じように切り替わるだろう。
ラウンドテーブルの参加者たちの予測によると、6Gの最初の試作版が登場するのは、2027〜2028年ごろになる見込みだという。セルラーリリース向けにプラットフォームを構築する、移動体通信の標準化団体「3GPP(3rd Generation Partnership Project)」は、2028年に「Release 21」が完成してから、6Gの始動を宣言できるとみているようだ。
Nokia CXで戦略/技術部門担当バイスプレジデントを務めるHilary Mine氏は、「まずは、標準規格の準備を整え、それから半導体を設計する必要がある」と指摘する。
「2028年ごろに、韓国で初期導入が始まるだろう。ただし、欧州の一部や北米も、ワイヤレス技術を最初に導入しようと競争を繰り広げるのではないか」(Mine氏)
Brooklyn 6G Summitに参加したほぼ全ての業界幹部たちが、「2030年ごろをメドに実用化が進むだろう」との見方で一致している。約10年後に、この予測の結果が証明されることになるだろう。
ここで忘れてはならないのが、世界は今もまだパンデミックのさなかにあるという点だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって、3GPP 5G会議は既に延期されており、一部の5G導入予定が頓挫している。次の5Gアップグレード仕様である「Release 17」は、もともと2021年9月に凍結される予定だったが、現在では2022年第2四半期に完了する見込みだ。
新型コロナウイルスの変異株が新たにほんの数個でも出現すれば、5G関連のスケジュールを中断あるいは、6Gのタイムラインを断念せざるを得ない状況にもなり得る。
高密度化が鍵に
米国NYU(ニューヨーク大学)科学技術専門校 無線研究センター「NYU Wireless」の創設者であるTed Rappaport氏は、「セルラーインフラのアップグレードによって、5Gの高密度化を実現すれば、6Gにとっても長期的なメリットを提供できる」と述べている。
同氏は、「現在、ミリ波やミッドバンド5G向けとして高密度化が行われていることから、6Gインフラの進化が加速していくだろう。このような高周波数帯のアダプティブアンテナ技術により、SNR(信号対雑音比)を高めることで、例えば、周波数が高くなるに伴って生じる損失といった課題を解決できる」と付け加えた。
Rappaport氏は、5Gミリ波技術の推進者の中でも、最も重要な人物の1人だ。同氏が6G向けの高周波電気通信を熱心に推進しているのも、当然のことだといえる。
2030年をメドに6Gが導入される予定であることを受け、今後の課題として、3G/4Gスペクトルをどう使っていくかが挙げられる。既存のローバンド帯は、大量の新型IoT(モノのインターネット)デバイスによってほとんど占拠される可能性がある、限られたリソースなのだ。
NokiaのPeter Veeter氏は、「ローバンド帯は、6Gのセンサーアプリケーションなどさまざまな用途向けとして必要になるだろう。また、5G非地上系ネットワーク(NTN:Non Terrestrial Network)も、6Gにとって重要な存在になる」と述べる。
レーダーへの関心が高まる
NYU Wirelessの研究グループは、「6Gは、少なくとも100GHzを超える周波数帯からサブテラヘルツ波を使用するとみられる」と予測する。Rappaport氏は、「データ速度は数十〜数百ギガビット/秒、レイテンシは1ミリ秒未満になる見込みだ」と述べる。
高い周波数のミリ波やテラヘルツ波によって実現されるセンシングやローカライゼーションは、非常に有望なアプリケーショになるだろう。さらに高度なビーム技術により、例えば、ネットワーク接続されていない6G対応スマートフォンなどの各種デバイスで、レーダーを感知しながら、従来型の音声通信を提供することが可能になる。
テラヘルツ波センシング
テラヘルツ波センシングは、産業アプリケーションや自動運転、顕微鏡手術などのさまざまな用途向けに、位置情報の精度を高めるために適用することが可能だ。実際に、遠隔手術が2001年から導入されたことで、へき地や十分なサービスを受けていない地域において、病院まで遠いことや外科医が不足しているといった問題が克服されるようになった。とはいえ、このようなシステムは決して安価ではない。
5G-Advanced
6G推進への重要なステップとなるのが、「5G-Advanced」仕様のリリースだ。3GPPはこの5G-Advancedを、2023年末に「Release 18」で策定完了とする予定である。2025年までには商用ネットワークで導入される見込みだ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 一般的な5Gスマホで、衛星との直接接続を実現へ
もう、『圏外だ』という言い訳はできなくなりそうだ。「5G NR(New Radio)」規格の最新のアップデートによって、互換性のあるデバイスは世界中どこにいても5G(第5世代移動通信)対応の衛星で接続できるようになる。接続には、従来のような専用の携帯電話機も必要ない。 - 世界の5Gユーザー、21年末には5億人超に Ericsson
エリクソン・ジャパンは2021年7月13日に記者説明会を開催し、同年6月に発行した、世界の移動通信市場のトレンドに関する最新調査報告書「エリクソンモビリティレポート」最新版の概要について説明した。 - 数ミリ〜数十センチ間で、数百Mbpsの高速無線通信
パナソニックは2021年11月10日、OFDM(直交周波数分割多重)変調方式の一つであるWavelet OFDMを適用した近距離無線通信技術「PaWalet Link」を開発したと発表した。 - 置くだけでWi-Fiエリアを拡張、遠隔支援しやすく
加賀FEI(旧富士通エレクトロニクス)は「第7回 IoT&5Gソリューション展【秋】」(2021年10月27〜29日、幕張メッセ)で、スマートグラスとWi-Fiエリア拡張技術「PicoCELA」を組み合わせた遠隔支援ソリューションを紹介した。 - 2方向へ電波放射可能なミリ波5G用アンテナモジュール、村田製
村田製作所は2021年10月14〜15日、オンラインで説明会を行い、オンライン展示会「CEATEC 2021 ONLINE」(2021年10月19〜22日)に出展する製品について説明した。同社は、今回、2方向への電波放射が可能なミリ波5G(第5世代移動通信)小型アンテナモジュール「LBKAシリーズ」を初展示する。