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「Xperia PRO-I」を分解、ソニーならではの技術が生み出した“デジカメとスマホの融合”この10年で起こったこと、次の10年で起こること(59)(3/3 ページ)

ソニーの新型ハイエンドスマートフォン「Xperia PRO-I」を分解する。最大の特徴は1インチのイメージセンサーを搭載し、現在最上位レベルのカメラ機能を実現したことにある。カメラのレビューや性能は多くの記事が存在するので、本レポートではハードウェアを中心とした報告としたい。

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大型イメージセンサー搭載はトレンドに

 表1は、2021年にソニーから発売されたハイエンドスマートフォン3機種の内部の様子である。


表1:Xperia 上位モデル3機種の内部[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 2021年2月に発売された「Xperia PRO」は、HDMIの入力端子を持つという画期的なものであった。7月には「Xperia 1 III」が発売され、ソニー初の光学式ズームカメラが搭載されている。上記2機種は、5G通信としてサブGHzだけでなくミリ波にも対応し、ミリ波用アンテナなども搭載されている。

 2機種は基板と電池が完全に分離されており、基板は通信基板とプロセッサ基板を分離した、2層構造を用いている。メインのプロセッサは、Xperia PROがQualcommの「Snapdragon 865」、Xperia 1 IIIがSnapdragon 888と異なっているが、内部の基本構成はほぼ似通っている。

 だが、最新のXperia PRO-Iでは2層基板は用いられておらず、先の2機種とは内部の配置位置、構成は全く異なるものになっている。Xperia PRO-Iにはデジカメ用のプロセッサが入ることになり、その分の機能を2層基板の中に埋め込むスペースがなかったので、1枚基板にして大幅に内部のレイアウトを見直したものと思われる。

 2021年は1インチカメラセンサーを搭載するスマートフォンが3機種発売された。スマートフォンにも大型のセンサーが搭載される流れが本格的に起こっている。

 レンズメーカーのLeica初のスマートフォン「Leitz Phone 1」、シャープの「AQUOS R6」がほぼ同時期の2021年夏に販売開始されている。AQUOS R6はLeica製のレンズを使っているので、両社は共同で1インチセンサー搭載スマートフォンを開発したのだろう。

 図5はシャープAQUOS R6とソニー Xperia PRO-Iの1インチカメラ部の様子である。


図5:2021年に発売された、1インチイメージセンサーを搭載するスマートフォン[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 ソニーのXperia PRO-Iは3機種目という位置付けになるが、上述のようにデジカメの高度なチップや機構をそのまま移植したという点で、センサーを大型化しただけではないデジカメとスマートフォンを融合したものとなっている。

 中国DJIが2021年末に発売した新型ドローン「Mavic 3」にも新しいカメラ技術が採用されていて、カメラ部にはエレクトロニクスとメカトロニクスの融合という側面と、他の製品のコア技術がそのまま注ぎ込まれるという流れが進んでいる。2022年以降、さらに進化する分野であることは確実である。さらなるスマートフォン内部のレイアウトや構成の見直しによって、4/3インチセンサーを搭載した製品などが出てくる可能性も十分にあるだろう。

 図6は、AQUOS R6とXperia PRO-Iに搭載されている1インチセンサーのピクセル部の写真と、ピクセル詳細の電子顕微鏡画像である。


図6:AQUOS R6とXperia PRO-Iに搭載されている1インチセンサーのピクセル部[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 ともにベイヤー配置構成となっており、基本構造は同じものだ。だがピクセルサイズ、ピクセルピッチは異なっている。同じものが使われているわけでない。AppleやSamsung、Google、中国メーカーなどがスマートフォンの優位化、差別化ポイントをカメラに置いており、日進月歩の進化が続いている。プロセッサや通信の進化も止まらない。2022年以降のスマートフォンの進化を、当社は今後も最優先で注視していく。


執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年にわたる半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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