パワー半導体研究開発に1000億円、東芝の半導体戦略:HDD、半導体製造装置の戦略も説明(4/4 ページ)
東芝は2022年2月8日、会社分割後にできる2社の事業戦略に関する説明会を行った。デバイス&ストレージ事業をスピンオフする「デバイスCo.」では、シリコンパワー半導体のラインアップ拡充やSiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)デバイス開発を加速し、パワー半導体の研究開発だけで5年間に1000億円を投入する計画などを明かした。
マスク描画装置、エピタキシャル成長装置の成長戦略
半導体製造装置を扱うニューフレアテクノロジーの事業では、電子ビームマスク描画装置と、エピタキシャル成長装置に注力していく。
マスク描画装置では、7nm以下の微細化プロセスの半導体製造に必要なフォトマスクについて、「大幅に需要が伸びることから、マルチビーム機の新規事業が大きく拡大する見込み」と説明。また、8nm以上のプロセスの半導体製造用のフォトマスクは製品数の増加による需要増で今後も拡大が期待されることから、シングルビームのマスク描画装置についても「一定の装置需要が毎年見込まれる」としている。
なお、ニューフレアテクノロジーはシングルビーム機では、20nm以下の先端ノード向け電子ビームマスク描画装置としては市場シェア100%(2021年12月現在、同社調べ)といい、「今後、納入済の装置に対してサポートとメンテナンスのリカーリングビジネスを拡大する」としている。
マルチビーム機「MBM-2000」については、2021年度から顧客に納入を開始。「既にアジア/北米の複数顧客から注文があり、2022年度は出荷台数の拡大を計画している」と説明。シングルビームで培った信頼性と顧客リレーション、半導体事業の技術を用いたキーパーツ、高い生産効率と信頼性などを活用し2023年には市場シェア50%を計画している。
MBM-2000では、特に差異化技術として、ニューフレアが独自開発した高輝度電子源のほか、26万本のビームを個別に制御するため東芝のデバイス技術を用いて完成させた「マルチビーム制御素子(BAA)」を強調。森氏は、「この素子による独自の一段加速方式は高精度で高い安定性を有する描画を実現できる」と語った。
また、2nm以降のデザインルールに対応する次世代機「MBM‐3000」に向けてはさらなる高電流、高輝度を得るための新電子源と、より高精度大規模のマルチビーム制御素子を開発中で、「顧客の開発ロードマップにミートさせるべく、2023年中に出荷開始したい」としている。
エピタキシャル成長装置では、xEVや次世代通信規格に用いられるSiC、GaNパワー半導体の急伸長、200mmウエハーへの大口径化などが市場成長をけん引すると見込む。同社のSiCやGaN向けエピタキシャル成長装置は、反応炉内で高速に回転するウエハーに向けて垂直下向きにガスを均一に流す独自の方式であり、膜表面の低欠陥密度、高均一性、高速成膜を実現するという。森氏は、「今後主流になる200mmウエハーでも高い成膜速度を維持でき、現在の150mmウエハーと同等のスループットを実現している」と語った。
なお、ニューフレアテクノロジー事業全体としては、売上高を2021年度見込みの410億円から2025年度には890億円にまで伸ばす方針だ。
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