EV向け固体電池など開発へ、「3D電極技術」の新興企業:エネルギー密度、電力、寿命が向上(1/2 ページ)
二次電池を手掛けるイスラエルの新興企業Addionicsは、独自の電極技術を中心に電池構造を再設計する取り組みを進めるため、2700万米ドルの資金を調達した。電極の形状を従来の2次元から3次元(3D)に置き換えた「スマート3D電極」の開発に注力している。同社のCEO(最高経営責任者)兼創業者であるMoshiel Biton氏によると、このアプローチによってエネルギー密度と電力が向上する上に、バッテリー寿命も延びるという。
二次電池を手掛けるイスラエルの新興企業Addionicsは、独自の電極技術を中心に電池構造を再設計する取り組みを進めるため、2700万米ドルの資金を調達した。
イスラエルのテルアビブを拠点とするAddionicsは、電極の形状を従来の2次元から3次元(3D)に置き換えた「スマート3D電極」の開発に注力している。同社のCEO(最高経営責任者)兼創業者であるMoshiel Biton氏によると、このアプローチによってエネルギー密度と電力が向上する上に、バッテリー寿命も延びるという。
Biton氏は「われわれは2024年までの商業化を目標に、2700万米ドルの資金を活用して技術能力とアプリケーションをさらに発展させる計画だ。今回の投資は2つの試験生産施設の建設やチームの拡大、さらにはパートナーとより良く関わり合うために米国ならびにドイツにおける活動強化にも活用する」と述べた。
Addionicsが進行中の5つの商業プロジェクトは、大手サプライヤーと共に自動車アプリケーションをターゲットにしたものだ。Biton氏は、「これらのプロジェクトでは既に利益が出ている。どのプロジェクトでも、当社のスマート3D電極を統合した別のケミストリー(電池の内部物質)に焦点を当てている。例としては、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リン酸鉄リチウム、シリコンアノード、リチウムポリマー電池、固体電池などが挙げられる」と述べた。
Addionicsは2021年、フランスのSaint-Gobainと連携してEV(電気自動車)向けの固体リチウムイオン電池を共同開発することを発表した。
既存技術の課題を解決する、次世代電池の実現へ
気候変動、温室効果ガス排出量の増加、そして再生可能エネルギーの必要性から世界経済は「電化」へと向かっている。より効率的でコスト効率の良い、さらに安全な電池が入手できなければ、EVの導入とエネルギー貯蔵で成功を収めることはできないだろう。そうした背景の下、リチウム硫黄やリチウム金属といったケミストリーや新たな化学式、新材料を中心に、多大な努力と費用が次世代電池の開発に投じられてきた。
既存の電池は、より多くのエネルギーを貯蔵するか、より速く充電/放電するかのどちらかしか対応できない。つまり、既存の電池技術では、EVアプリケーションで航続距離の伸長と急速充電の両方を実現することはできないのだ。
もう1つの課題として、いわゆるアノードとカソードのミスマッチがある。Biton氏は「Addonicsの技術の斬新さは、既存、新興を問わずどのケミストリーでもコストを増やすことなく電池性能を向上できる能力にある」と主張した。
さらにBiton氏は、固体電池について「多くの可能性を秘めている」と付け加えた。その上で「われわれの技術の最大の利点の1つは、固体電池に関する主要な問題である『アノードとカソードの容量のミスマッチ』を解決できるという事実だ。その結果、より高エネルギーで機械的に安定した固体電池を開発することができる」と述べた。
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