「末端」だったから下剋上も早い? 身近な電子機器の中核に入り込む中国製チップ:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(60)(1/4 ページ)
今回は主に身近な製品に搭載されている中国半導体の事例を紹介する。この1〜2年、中国半導体の比率が上がったのかといった問い合わせが多かった。またどのような分野で増えているのかなどの問い合わせも増えている。
「必要なものは自分で作って自分で使う」
米中問題が半導体やシステム業界に与えた影響は大きい。弊社は年間100製品を超える中国製品を分解し内部の構成などを解析しているので、新製品や新分野での中国製品の内部構成は若干ながら分かっている。この1〜2年、中国半導体の比率が上がったのかといった問い合わせが多かった。またどのような分野で増えているのかなどの問い合わせも増えている。
ここでは詳細に触れないが、あらゆる分野で“同時多発的”に中国製が増えている。身近なところでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で需要が急増した非接触体温計や血中酸素飽和度計のおおむね8割が中国製であり、内部の半導体チップさえも中国メーカーのものが使われている。大型量販店などで売られる比較的安価なワイヤレスイヤフォンも多くは中国半導体が“丸々”使われている。丸々というのはワイヤレスイヤフォンを構成する最低限必要な3つの部品が、いずれも中国製であるからだ。電池、ドライバー、Bluetooth Audioチップである。そうした中、今回は2022年現在の話題の製品や身近な製品をいくつか紹介したい。
図1は、中国Landzo Technologyのお絵描きロボット「QUINCY」である。ネットなどでも販売されている商品で、文字通り絵を描くロボットである(ただし商品ジャンルとしてはトイ)。年明けに米国で開催された「CES 2022」では、イノーベーションアワードを受賞した製品である。
内部には電池、3個のモーター、コントロール基板、スキャン基板(カメラ付)などが入っている。多くは中国製部品で構成されている。モーターは中国YINUMOTOR、SDカードは中国NETEC、電池も中国製で、さらにバッテリー充電用ICも中国TOP POWER ASIC製となっている。かつて(ずいぶん昔)中国は買ってきたものを「並べてつなぐ」、単純な組み立て工場といわれていたが、現在は内部の主要部品も多くは自国内で設計から製造まで行い、「必要なものは自分で作って自分で使う」に切り替わっている。当然ながら、改良改善も毎日のように行われていることは間違いない。
弊社は分解を中核に置く調査会社なので、同じ製品を何度も分解することがある。中国製の商品を一度分解した後に、時間を置いて同じ物を買って再分解することもある(依頼されて行うことも多い)。外観や機能が同じでも中身が変わっている場合や、明らかに改善されている場合もある。いわゆるランニングチェンジと呼ばれる、より良くしながら走るスタイルが見て取れる。
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