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ワイヤレス電力伝送の基本原理(後編)福田昭のデバイス通信(349) imecが語るワイヤレス電力伝送技術(3)

後編となる今回は、誘導型(非放射型)ワイヤレス電力伝送(WPT)の簡略史と、放射型WPT技術の種類を解説する。

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 (ご注意)今回は前編の続きです。まず前編を読まれることを推奨します。



誘導型ワイヤレス電力伝送の簡略史

 前編では、有線による電力伝送(ワイヤード電力伝送)とワイヤレス電力伝送(WPT:Wireless Power Transfer)の長所と短所を概観し、ワイヤレス電力伝送(WPT)を実現する2大原理である「誘導型(非放射型)」と「放射型」の中で誘導型(非放射型)の基本原理を簡単に解説した。

 Visser氏の講演によると、誘導型(非放射型)のWPT技術を実用化した事例は60年ほど前の1961年にさかのぼる。1961年に米国の電気・電子機器メーカーGeneral Electricが電動歯ブラシの充電器に電磁誘導方式のWPTを採用した。それまでの電動歯ブラシは充電用の電源ケーブルを備えており、大きくて重くてかさばるものだった。ワイヤレス充電によって電動歯ブラシを大幅に軽く小さくした。


誘導型(非放射型)WPT技術の簡略史。左は1961年にGeneral Electricが開発した非接触充電式の電動歯ブラシ。中央は米国マサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)の研究チーム。2007年に同研究チームは磁気共振技術を導入して60Wと大きな電力を2mと長い距離で伝送して見せた。右はワイヤレス伝送の標準規格「Qi(チー)」のロゴマーク[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

 電磁誘導方式のWPT技術には伝送距離が長くても数センチメートルという制約がある。この制約を外すブレークスルーが、磁界共振(磁気共鳴)技術の導入だった。2007年6月に米国マサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)は、電磁誘導と磁界共振を組み合わせることで、2mと非常に長い距離で60Wの電力を送電することに成功した。具体的には、2mの距離に送電コイルと受電コイルを配置し、受電コイルに接続した60Wの電球を点灯させて見せた。このことはワイヤレス電力伝送技術の研究開発コミュニティーに強い衝撃を与え、磁気共振方式の研究が一気に活発化した。

 また2008年12月にはワイヤレス電力伝送(給電、充電)の標準規格を策定する業界団体WPC(Wireless Power Consortium)が発足した(参考記事)。WPCはモバイル機器向けに5W〜15Wの小電力をワイヤレス伝送する技術規格「Qi(チー)」を策定してきた。最初のバージョンであるVersion 1.0(Ver. 1.0)は2010年7月に策定が完了した。Ver. 1.0は5Wの電力を伝送する。2015年10月に策定が完了したVer. 1.2では伝送電力の最大値を15Wに引き上げた。2021年8月には充電システムの開発を容易にするとともに電力伝送の安全性を高めたVer. 1.3をリリースしている。

マイクロ波あるいは光ビームで電力を遠くへ送る

 誘導型(非放射型)WPT技術は伝送距離が数センチメートルしかなく、共振回路技術を導入しても数メートルとかなり短い。これに対して伝送距離を数十メートル〜数百メートルと長く延ばせるのが、放射型WPT技術である。

 放射型WPT技術には大別すると、電波(マイクロ波)で電力を送る「マイクロ波空間伝送方式」と、光ビームで電力を送る「光伝送(光無線)方式」がある。前者は送電アンテナと受電アンテナ、後者は半導体光源(通常は半導体レーザー)と太陽電池の組み合わせによって電力を伝送する。


放射型WPT技術の一覧。筆者の調べによる(Visser氏の講演スライドではない)[クリックで拡大]

 マイクロ波空間伝送方式と光伝送(光無線)方式はいずれも伝送距離を長く取れるものの、伝送効率はあまり高くない。通常はマイクロ波をビーム状に絞って放射することで効率を稼ぐ。また光伝送は、レーザー光による光ビームの利用が前提である。送電側ではkW(キロワット)級の大電力を扱うことが少なくない。大電力の場合は人体に対する保護が必須となる。

(次回に続く)

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