大電力対応ワイヤレス充電用シート型コイルを開発:薄型軽量でコスト低減を可能に
大日本印刷(DNP)は、電動車や無人搬送車(AGV)向けに、11.1kWクラスの大電力伝送に対応しつつ、薄型軽量でコスト低減を可能にした「ワイヤレス充電用シート型コイル」を開発した。
フェライト含むコイルの厚みと重さを、それぞれ従来の約4分の1に
大日本印刷(DNP)は2021年8月、電動車や無人搬送車(AGV)向けに、11.1kWクラスの大電力伝送に対応しつつ、薄型軽量でコスト低減を可能にした「ワイヤレス充電用シート型コイル」を開発したと発表した。
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などの電動車では、利用者の利便性を高める技術として、ワイヤレス充電システムの早期実用化に期待が高まっている。ここで課題となっているのが、コイルの厚みや重さ、高コストという点である。
DNPが新たに開発したシート型コイルは、送電側と受電側両方のワイヤレス充電システムに対応する。電動車向けのコイルは、厚みがフェライトを含め約3mm(フェライトが約2mm、コイルシートが約1mm)、重さは約1kg(SAE Internationalが規定するJ2954 WPT3/Z2仕様のコイル)である。
電導線としてリッツ線を用いた従来製品は、厚みがフェライトを含め約12mm、重さは約4kg以上もあるという。これに比べると新たに開発したシート型コイルは、厚みと重さがそれぞれ約4分の1となった。その分、材料の使用量も節減できるため、部材コストを削減することが可能になる。
独自のコイル設計技術を用い、コイルの外側に発生する漏えい磁界を低減し、発熱を抑えて平均化することにより、11.1kWクラスの大電力伝送を可能にした。コイルサイズや使用電力に最適な設計を行えば、設置スペースが制限される無人搬送車(AGV)などにも応用できるという。
DNPは、開発した大電力対応ワイヤレス充電用シート型コイルの早期製品化を進め、2025年までに年間50億円の売上高を目指す。今後は、「走行中充電」に対応できる技術の開発も行う計画である。
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