ダイヤモンドと接合したGaNで、トランジスタ作製:炭化ケイ素層を用い膜剥がれ防ぐ
大阪市立大学と東北大学、エア・ウォーターらの研究グループは、ダイヤモンドに直接接合した窒化ガリウム(GaN)を約800℃で熱処理し、GaNトランジスタを作製することに成功した。
トランジスタの放熱性を向上、大面積化も可能に
大阪市立大学と東北大学、エア・ウォーターらの研究グループは2022年3月、ダイヤモンドに直接接合した窒化ガリウム(GaN)を約800℃で熱処理し、GaNトランジスタを作製することに成功したと発表した。GaNトランジスタを作製した後にダイヤモンドと接合する方式に比べ、大面積化が可能になる。
GaNトランジスタは、シリコン(Si)トランジスタに比べ、高出力や高周波動作が可能など、優れた特性を有するため、携帯基地局などへの採用が拡大している。ただ、動作時の発熱による性能劣化などが課題となり、有効な放熱対策が必要となっていた。その方法の1つとして注目を集めているのが放熱材料にダイヤモンドを用いることである。
大阪市立大学は2021年9月に、GaNとダイヤモンドの直接接合に成功し、1000℃までの熱処理を行っても接合が維持されることを確認した。今回は、Si基板上に堆積した「厚さ8μmのGaN層と厚さ1μmの炭化ケイ素(3C-SiC)バッファ層」をSi基板より分離し、表面活性化接合法によってダイヤモンドと接合する方法を開発した。
この方法で作製したGaN層/ダイヤモンド接合試料を800℃で熱処理し、GaNトランジスタを作製した。高品質の3C-SiC層を設けたことで、高温処理しても膜剥がれのない、良好な接合であることを断面SEM像によって確認した。
さらに、GaN層の電気的な性質劣化を調べるため、Si基板とダイヤモンド基板上にそれぞれ作製したGaNトランジスタの特性を比べた。この結果、同一の電力を印加した時の温度上昇は、ダイヤモンドと接合した方が約3分の1と小さく、トランジスタ特性が改善されることを実証した。
今回の研究成果は、大阪市立大学大学院工学研究科の梁剣波准教授と重川直輝教授、東北大学金属材料研究所の大野裕特任准教授と永井康介教授、物質・材料研究機構(研究当時)の清水康雄博士および、エア・ウォーターの川村啓介博士らによるものである。
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