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電磁波で電力を伝送するという夢の続き(後編)福田昭のデバイス通信(353) imecが語るワイヤレス電力伝送技術(7)(2/2 ページ)

後編では、ウイリアム・ブラウン(William C. Brown、1916年5月22日生〜1999年2月3日没)による実験の概要を説明する。

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宇宙の太陽光発電所から地球に電力を送る

 地上からではなく、逆に宇宙空間からの送電を構想したのが航空宇宙エンジニアのピーター・グレイザー(Peter Edward Glaser、1923年9月5日生〜2014年5月29日没)だ。グレイザーは宇宙空間の太陽光発電所からマイクロ波ビームによって地球に電力を送るアイデアを着想し、1973年12月に米国特許「US3781647」を取得する。

 地球上の太陽光発電パネルは、雨天や夜間などでは発電量がほぼゼロになってしまう。そこで宇宙空間に太陽光発電パネルを配置する。宇宙空間では常に太陽光を受けて発電し、地球に電力を送ることが可能だ。グレイザーの壮大な構想は一時、世間の注目を集めた。


左端はグレイザーの肖像。その右は宇宙発電所からマイクロ波ビームで地球に電力を伝送する特許「US3781647」の表紙と図面[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

2枚の太陽電池パネルで発電した電力をマイクロ波ビームで地上に送電する人工天体の概念図[クリックで拡大] 出所:米国特許「US3781647」

 大電力をマイクロ波ビームで伝送するという手法には、大きな弱点がある。伝送距離が長くなると伝送効率が急激に下がってしまうのだ。ブラウンとグレイザーの構想を含め、大電力のマイクロ波送電は実用には至っていない。依然として「夢」のままだ。

(次回に続く)

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

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