深層学習、カメラ、照明も搭載した小型画像センサー:生産ラインでの画像検査が簡単に(2/2 ページ)
FA(ファクトリーオートメーション)向けのビジョンシステムやビジョンソフトウェアを手掛ける米Cognexの日本法人であるコグネックスは2022年4月4日、ディープラーニングを搭載した画像センサー「In-Sight 2800」を発売した。低コストで小型、ディープラーニングに関する専門的な知識がなくても、“一般的なセンサー並みに簡単に使える画像センサー”というコンセプトで開発したという。
設定は5ステップで完了、ピントも照明も自動調整
冒頭で述べた通り「一般的なセンサー並みに簡単に使える画像センサー」を実現すべく、使い勝手についても工夫を施した。設定は5ステップで完了。ピントやトーチ照明も自動で調節する。学習の際は、ワーク(部品など検査の対象物)の画像を「OK」「NG」に振り分けていけばよい。「1枚の画像につき4〜5秒で学習することができる」(コグネックス)
コグネックスが開催した記者説明会では、車載用エアフィルターの外観検査、基板上の実装部品の有無、ねじの外観検査、対象物の品種判別などアプリケーション事例が幾つか紹介された。コグネックスによれば、検査できる対象物の大きさは、小型の物で16×12mm程度から、320×240mm程になっている。
In-Sight 2800の最大のターゲット分野は自動車部品だ。自動車の製造では自動化も進んでいるが、さまざまなポイントで状態/品種のチェックを多数行っているため、引き合いも大きいとみる。エレクトロニクス分野では、上記で紹介した基板の実装部品の有無の他、コネクターの嵌合チェックなども行える。
FA以外のターゲット分野としては、物流などが挙げられる。「ディープラーニングと組み合わせることで、ルールベースでは難しい判別も可能になる」(コグネックス)。同社は「ディープラーニングが生きるのは、一般消費財やパッケージ(包装)だ。これらの分野は、品種やチェック項目などで変動が多いため、センサーを導入することが難しく、目視による検査あるいは検査そのものができていないケースもある」と続け、こうした分野にIn-Sight 2800のビジネス機会があると示唆した。
イーサネットにつないでIoT対応も可能
工場内にあるIn-Sight 2800をイーサネットに接続することで、Webブラウザを介して、In-Sight 2800をリモートモニタリングすることもできる。画像データや検査結果はクラウドに自動保存されるので、SDカードなどを画像センサーから回収する必要はない。さらに、ギガビットイーサネットにも対応しているので、大容量のデータを高速転送することができる。
Cognexは2021年に創業40周年を迎えた。売上高は10億米ドルを超え、過去10年間、14%の年平均成長率(CAGR)で成長し続けている。コグネックスによれば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)下でさらに成長しているという。「当社は毎年、売上高の15%前後をR&Dに投資している。それが、経済的に厳しい状況であっても、成長できるバックボーンになっている」(コグネックス)。Cognexが現在注力しているのは、ロジスティクス分野とディープラーニング技術だ。「ロジスティクスの自動化においてマシンビジョンの役割が大きくなっており、当社のソリューションが伸びている。ディープラーニングにも積極的に投資していて、ディープラーニングを搭載した製品を積極的に市場に投入していく予定だ」(同社)
コグネックスの東京オフィス(東京都文京区)は最近、改装を行い、コグネックスの製品が稼働しているところを見られるデモルームが完備された。
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