マイクロ波による電力伝送技術の基礎理論(受信アンテナとインピーダンス整合):福田昭のデバイス通信(357) imecが語るワイヤレス電力伝送技術(11)(1/2 ページ)
今回は「5.3 アンテナの整合」の講演部分を説明する。
アンテナと整合回路が受信電力の利用効率を大きく左右
半導体のデバイス技術とプロセス技術に関する世界最大の国際学会「IEDM(International Electron Devices Meeting)」が昨年(2021年)12月11日〜15日に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された。同年12月17日以降は、インターネットを通じてオンデマンドで録画済みの講演ビデオを視聴可能になった。
IEDMは12日に「ショートコース」と呼ぶ技術講座をプレイベントとして実施した。その1つである「Emerging Technologies for Low Power Edge Computing (低消費エッジコンピューティングに向けた将来技術)」を共通テーマとする6件の講演の中で、「Practical Implementation of Wireless Power Transfer(ワイヤレス電力伝送の実用的な実装)」が極めて興味深かった。講演者はオランダimec Holst Centreでシニアリサーチャー、オランダEindhoven University of TechnologyでフルプロフェッサーをつとめるHubregt J. Visser氏である。
そこで本講演の概要を本コラムの第347回から、シリーズでお届けしている。なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者のご理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer(ワイヤレス電力伝送の実用的な実装)」のアウトライン。直訳すると「1. はじめに」「2. 誘導型ワイヤレス電力伝送」「3. 放射型ワイヤレス電力伝送の歴史(黎明期)」「4. 放射型ワイヤレス電力伝送の歴史(現代)」「5. 放射型ワイヤレス電力伝送の基礎」「6. レクティナ」「7. 放射型ワイヤレス電力伝送の応用例」「8. 将来への展望」 となる。本シリーズの第8回から「5. 放射型ワイヤレス電力伝送の基礎」の講演部分を紹介している[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)
本シリーズの第8回から、電磁波(マイクロ波)を使った電力伝送の基礎理論に関する講演部分を紹介している。講演全体では、5番目のパート「5. 放射型ワイヤレス電力伝送の基礎」に相当する。このパートは5つのサブパート、「5.1 アンテナ」「5.2 フリスの伝達公式」「5.3 アンテナの整合」「5.4 利用可能な周波数帯域と許容電力レベル」「5.5 結論」に分かれる。
マイクロ波電力伝送の基礎理論を解説するサブパートのアウトライン。「5.1 アンテナ」「5.2 フリスの伝達公式」「5.3 アンテナの整合」「5.4 利用可能な周波数帯域と許容電力レベル」「5.5 結論」で構成する。今回は3番目のサブパートである「5.3 アンテナの整合」の講演部分を扱う[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)
前回は2番目のサブパートである「5.2 フリスの伝達公式」の講演部分を解説した。今回は3番目のサブパートである「5.3 アンテナの整合」の講演部分を説明しよう。送受電システムのブロック図では、受電側(受信側)の入り口に相当する。電磁波を受信する「アンテナ(受電用アンテナ、receiving antenna)」から「インピーダンス整合回路(impedance matching)」を経由し、「整流回路(rectifier)」の入力部までを扱う。ここでインピーダンス整合回路は、アンテナと整流回路のインピーダンスの違いによって生じる反射損失を最小化するために存在する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.