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マイクロ波による電力伝送技術の基礎理論(受信アンテナとインピーダンス整合)福田昭のデバイス通信(357) imecが語るワイヤレス電力伝送技術(11)(2/2 ページ)

今回は「5.3 アンテナの整合」の講演部分を説明する。

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アンテナ抵抗と整合回路の入力コンダクタンスを等しくする

 アンテナとインピーダンス整合回路、整流回路(入力部)は、下図の等価回路で表現できる。受信電力や電圧などの関係式も下図には併記してある。


アンテナから整合回路、整流回路(入力部のみ)までの等価回路と関係式[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

 アンテナが受信する電圧をVg、アンテナの抵抗をRg、インピーダンス整合回路の入力インピーダンスをZin、入力アドミタンス(インピーダンスの逆数)をYin、入力電圧をVin、入力電力をPinとする。また、整流回路の入力電圧をVrect、入力電力をPrect、とする。

 インピーダンス整合回路の入力電力Pinは、入力電圧Vinの2乗と入力アドミタンスYinの実数部に比例する。入力電圧Vinはアンテナの受信電圧Vgに比例し、アンテナ抵抗Rgと入力アドミタンスYinの積によって低下する。整流回路の入力電力Prectは、整流回路の入力電力Vrectの2乗と負荷のアドミタンスYLの実数部に比例する。

 また回路のコンダクタンス(アドミタンスの実数部)成分をG、リアクタンス(インピーダンスの虚数部)成分をX、サセプタンス(アドミタンスの虚数部)成分をBと表記し、上記の記号と同様に添字によってブロックを区別する。

 電力損失がゼロの場合、整流回路の入力電力Prectはインピーダンス整合回路の入力電力Pinに等しい。このとき整流回路の入力電圧Vrectは、Pinの2倍を負荷コンダクタンスGLで割った値の平方根になる(詳細は上記の図面に掲載した右下の式を参照)。


整流回路に入力する電圧Vrectに関する式の続き[クリックで拡大] 出所:imecおよびEindhoven University of Technology(IEDMショートコースの講演「Practical Implementation of Wireless Power Transfer」のスライドから)

 アンテナの出力Pavは、アンテナ受信電圧Vgの2乗をアンテナ抵抗Rgの8倍で割った値である。そこでVgをPavで置き換える。ここから受信電力の感度を最大にすることを考える。このことは、整流回路の入力電圧Vrectを最大化することと同じである。

 最大化の条件は、インピーダンス整合回路の入力コンダクタンスGinがアンテナ抵抗Rgの逆数と等しく、入力サセプタンスBinがゼロとなる場合だ。このとき、整流回路の入力電圧Vrectは最大(Vrectmax)となり、Pavの2倍を負荷コンダクタンスGLで割った値の平方根になる。なお負荷コンダクタンスGLの逆数は、負荷抵抗RLの2乗と負荷リアクタンスXLの2乗を合計した値を負荷抵抗RLで割った値でもある(上図の右下に記述した式を参照)。

(次回に続く)

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

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