AMDの最新GPU「Radeon RX 6500 XT」戦略を読み解く:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(62)(1/4 ページ)
2022年も新しい半導体チップが次々と発売されている。新製品ラッシュとなっているのは米AMDだ。今回はGPU「Radeon RX 6500 XT」を中心に報告する。
2022年も新しい半導体チップが次々と発売されている。新製品ラッシュとなっているのは米AMDだ。GPUとしては1月に「Radeon RX 6500 XT」、4月に「Radeon RX 6400」、CPUは4月に多くの新製品が発売されている。
最も話題となっているのは図1右の「Ryzen 7 5800X3D」である。積層DRAMを活用することでL3キャッシュの容量を従来製品の3倍に拡張した製品だ。弊社では現在Ryzen 7 5800X3D を複数個入手し、断面解析を行っているところである。
AMDはハイエンドGPUにおいて、HBM2(High Bandwidth Memory 2)で積層DRAM技術を用いている。弊社では過去に何度もHBM2の解析をしているので、Ryzen 7 5800X3Dの積層とHBM2との差も明らかにしていく予定である。
今回はGPUを報告する。図1左は2022年に発売されたRadeon RX 6500 XTだ。Radeon RX 6500 XTは、2020年11月に発売されたハイエンドGPUの「Radeon RX 6900 XT」「Radeon RX 6800 XT」、2021年3月発売のミドル向けの「Radeon RX 6700 XT」、2021年10月発売の「Radeon RX 6600」と同じアーキテクチャ「RDNA 2」を活用するエントリーモデルのGPUとなっている。Radeon RX 6500 XTでは、コア数やメモリインタフェース数を削減し、シリコン面積を小さくすることでコストを抑えた。2022年4月にはさらにコア数を削減した「Radeon RX 6400」を発売している。
ハイエンドからのカットダウン
新しいアーキテクチャでは、真っ先にハイエンドをリリースし、次いでミドル、そのあとにエントリーというサイクルが取られることが多い。ハイエンドをカットダウンすることで、ミドルが生まれ、さらにカットダウンすることでエントリーを作ることができるからだ。
ハイエンドではシリコンサイズが大きいので、電源設計、クロック設計など多くの課題が発生する。大きなシリコンで距離が離れてしまうと信号の遅延も大きくなり、抵抗成分が増えて電源ドロップが大きくなるなどネガティブな事象が増える。特性を加味しハイエンドで手間をかけて設計したものをカットダウンする方が、デグレードする要素は少ない。そのため多くの半導体メーカーはハイエンドからリリースを開始し、その後カットダウン仕様を展開している。
ただし、ハイエンドの量産が安定してくるとハイエンドのさらに上(周波数アップ)のプレミアムモデルをリリースすることも多い。
Appleは「M1」シリーズでエントリーからスタートし、ミドル、ハイエンドと年々機能アップを続けているが、内部を構成する要素(CPUコア、GPUコアなど)が共通なので、最初から「M1 Ultra」(ハイエンド)の仕様があったものと思われる。AMDらと発表の順番が真逆だが、シリーズの仕様展開の構成は同じだ。
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